その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
私は拳を握った。悔しさでも、意地でもない。

これは――戦う者の覚悟だった。

デスクに戻ると、杉本さんがこちらを見ていた。

「岸本さん、神堂先生の選任になったんですよね。」

「……ええ。」

肯定すると、彼女は少し口元を引き結んだあと、言った。

「綾香先生は……どうすればいいですか?」

――あ。そうだった。

新しい綾香先生の担当は、杉本さん。あの繊細な言葉の世界を、これから彼女が見ることになる。

「彼女の思うようにしてあげてください。時間はかかるけど、信じて、待ってあげて。」

私はそう言った。心から。

でも――その言葉に、杉本さんは首をかしげた。

「それがダメだから、担当変わったんですよね?」

一瞬、胸が締めつけられた。

「会社は、結果を求めてる。“思うようにして”じゃ、何も変わらないってことじゃないですか?」

正論だった。冷たくも、正しい。
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