相棒をS級勇者に奪われた俺、スキル【力の前貸し】で勇者を破滅へ導く!~全てを負債地獄に叩き落とし、新たな魔王として君臨する!
第11話 ハイリスク×ハイリターン
俺はあらかじめ、入り口付近に木をばらまいておいた。
魔物に寝込みを襲われないためだ。
それが鳴ったということは、近くに魔物がいる証拠。
一度、大きく息を吸う。
昨日は利子返済を優先したため、スキルの検証は後回しになった。
だが今は返済の余裕がある。
今日はスキル検証に時間を充てられそうだ。
俺は洞穴の入り口に近づき、その近辺で身を潜めた。
外の様子をうかがう。
……予想通り、魔物がうろついている。
トカゲの頭と人型の体を持つ魔物、リザードマンだ。
「......あれ?」
おかしい。
俺はてっきり奴が、木の枝を踏んだと思っていた。
しかし、手前の枝よりも離れた場所に魔物はいる。
......だとしたら、一体だれがこの枝を鳴らした?
.........................。
考えても思い浮かばない。
「グルゥ!!」
リザードマンの咆哮。
ともかく、今は目の前のことを対処するしかねぇな。
奴はまだ俺の存在には気づいていないようだ。
それなら――
「力の前貸し」
隠れたままスキルを発動する。
これが成功すれば、戦わずして利子を稼げる。
相手が気づかぬうちに、莫大な負債を背負わせることも――
《対象の相手が貴方を認知していない為、前貸しの契約が成立しません。》
契約が成立しない。
スキルには“フェア”な条件があるということか?
少なくとも、隠れた状態では発動できないことが分かった。
なら次は――
「グルゥッ!?」
リザードマンの前に姿を現す。
だが、あえてすぐにはスキルを使わず――
一気に間合いを詰め、
「グアァァァァァァ!!!!」
剣で魔物の腹を斬る。
事前に全魔力《202エナジー》を攻撃ステータスに集中させておいた。
大ダメージは確実だろう。
検証は次の段階へ。
相手を弱らせた状態で――
「力の前貸し《バンス》」
前貸しの弱点は、敵の強化。
すでに弱っていれば、戦況はそう簡単に覆らないはず。
自分の魔力が相手に流れていく。
片目にプロンプトが浮かび、流れる魔力量が表示される。
10……30……。
だが、貸し出しは30で止まった。
「……は?」
自分で止めたわけではない。
スキルが自動で終了させたのだ。
「……。」
原因を考える。
今までは、保有する魔力の範囲で自由に貸せた。
つまり、今回がイレギュラー。
「相手を弱らせてから前貸しを使った……」
逆に、以前は戦闘前――
相手のHPが満タンに近い状態で使っていた。
「まさか、前貸しできる魔力量は、相手のHP残量と関係が?」
そうなると、弱った敵に前貸しする意味は薄い。
前貸しで得られる魔力は「利子の高さ × 貸し出す量」で決まる。
貸し出し量を最大にするには、万全な敵を強化するしかない。
「……劇的な成長には死が隣り合わせってか」
ハイリスク・ハイリターンの道。
復讐のためには、強大な魔力が必要だ。
だから危険は避けて通れない。
だが――
「望むところだ」
恐怖はない。
レベルが永久1の俺にとっては、どんな魔物も格上だった。
だからこそ、命をかけた戦いは日常にすぎない。
……足音が複数、近づいてくる。
仲間の血の匂いを嗅ぎつけたのだろう。
「グルゥアアアアアアアアアアアア!!!!」
5匹のリザードマンが乱戦を仕掛けてくる。
俺を囲むように輪を作った。
「どこからでもかかってこい。いつも通り乗り越えて、お前らの魔力をすべて回収してやる」
▽
「回収《レトリーブ》」
魔力をすべて狩り取る。
300近く増加した。
……今回の戦いを振り返る。
まず、輪を組んだリザードマンの1匹に力を前貸しした。
力が増したリザードマンは興奮し、最初に俺を襲おうとする。
そのとき、俺は仲間のリザードマンの近くまで誘導した。
そして、スピードステータスに全魔力を集中させ、攻撃を回避。
その一撃が仲間に直撃した。
そこから決着までは早かった。
リザードマン同士で仲間割れが始まる。
俺は、特定の個体が有利になるよう再び前貸し。
互いを潰し合い、最後に残った1匹を俺が倒した。
だが、課題もある。
腕のかすり傷に触れる。
リザードマンの反撃で受けた傷だ。
ステータス変動で交わそうとしたが、その切り替えの隙を突かれた。
「やっぱ……変動時には隙が出る」
わずかな隙。
されど、戦闘では命取り。
それに――
「まだ理想の動きには届いていない」
理想は、敵の動きに合わせて即座に、ステータスを変動させること。
だが、今のままでは無理だ。
変動のたびに隙が生じてしまう。
何か、打開策はないか――
サバババッ。
「……この音は」
歩きながら考えていたとき、かすかに滝の音が聞こえた。
意識した途端、急に喉が渇く。
持参していた水は昨日のうちに飲み干していた。
それ以来、水は口にしていない。
歩きが、走りに変わる。
ざぶざぶと響く滝の音。
「はぁ……はぁ……。水だ」
滝壺にたどり着くと、俺は夢中で水を飲んだ。
乾いた喉が潤い、体に活力が戻る。
魔境の森は蒸し暑く、冷たい水がひときわありがたい。
ザババババババ!!!!
バシャッ……
「……?」
滝の音に混じる、水を弾く音。
俺の動きではない。
誰かがいるのか?
音のした方に目を向けると――
そこには、女が湯浴みをしていた。
「……桃髪」
脳裏に、あのポーションがよぎる。
誰かがいるのか?
音のした方に目を向けると――
そこには、女が湯浴みをしていた。
「……桃髪」
脳裏に、あのポーションがよぎる。
魔物に寝込みを襲われないためだ。
それが鳴ったということは、近くに魔物がいる証拠。
一度、大きく息を吸う。
昨日は利子返済を優先したため、スキルの検証は後回しになった。
だが今は返済の余裕がある。
今日はスキル検証に時間を充てられそうだ。
俺は洞穴の入り口に近づき、その近辺で身を潜めた。
外の様子をうかがう。
……予想通り、魔物がうろついている。
トカゲの頭と人型の体を持つ魔物、リザードマンだ。
「......あれ?」
おかしい。
俺はてっきり奴が、木の枝を踏んだと思っていた。
しかし、手前の枝よりも離れた場所に魔物はいる。
......だとしたら、一体だれがこの枝を鳴らした?
.........................。
考えても思い浮かばない。
「グルゥ!!」
リザードマンの咆哮。
ともかく、今は目の前のことを対処するしかねぇな。
奴はまだ俺の存在には気づいていないようだ。
それなら――
「力の前貸し」
隠れたままスキルを発動する。
これが成功すれば、戦わずして利子を稼げる。
相手が気づかぬうちに、莫大な負債を背負わせることも――
《対象の相手が貴方を認知していない為、前貸しの契約が成立しません。》
契約が成立しない。
スキルには“フェア”な条件があるということか?
少なくとも、隠れた状態では発動できないことが分かった。
なら次は――
「グルゥッ!?」
リザードマンの前に姿を現す。
だが、あえてすぐにはスキルを使わず――
一気に間合いを詰め、
「グアァァァァァァ!!!!」
剣で魔物の腹を斬る。
事前に全魔力《202エナジー》を攻撃ステータスに集中させておいた。
大ダメージは確実だろう。
検証は次の段階へ。
相手を弱らせた状態で――
「力の前貸し《バンス》」
前貸しの弱点は、敵の強化。
すでに弱っていれば、戦況はそう簡単に覆らないはず。
自分の魔力が相手に流れていく。
片目にプロンプトが浮かび、流れる魔力量が表示される。
10……30……。
だが、貸し出しは30で止まった。
「……は?」
自分で止めたわけではない。
スキルが自動で終了させたのだ。
「……。」
原因を考える。
今までは、保有する魔力の範囲で自由に貸せた。
つまり、今回がイレギュラー。
「相手を弱らせてから前貸しを使った……」
逆に、以前は戦闘前――
相手のHPが満タンに近い状態で使っていた。
「まさか、前貸しできる魔力量は、相手のHP残量と関係が?」
そうなると、弱った敵に前貸しする意味は薄い。
前貸しで得られる魔力は「利子の高さ × 貸し出す量」で決まる。
貸し出し量を最大にするには、万全な敵を強化するしかない。
「……劇的な成長には死が隣り合わせってか」
ハイリスク・ハイリターンの道。
復讐のためには、強大な魔力が必要だ。
だから危険は避けて通れない。
だが――
「望むところだ」
恐怖はない。
レベルが永久1の俺にとっては、どんな魔物も格上だった。
だからこそ、命をかけた戦いは日常にすぎない。
……足音が複数、近づいてくる。
仲間の血の匂いを嗅ぎつけたのだろう。
「グルゥアアアアアアアアアアアア!!!!」
5匹のリザードマンが乱戦を仕掛けてくる。
俺を囲むように輪を作った。
「どこからでもかかってこい。いつも通り乗り越えて、お前らの魔力をすべて回収してやる」
▽
「回収《レトリーブ》」
魔力をすべて狩り取る。
300近く増加した。
……今回の戦いを振り返る。
まず、輪を組んだリザードマンの1匹に力を前貸しした。
力が増したリザードマンは興奮し、最初に俺を襲おうとする。
そのとき、俺は仲間のリザードマンの近くまで誘導した。
そして、スピードステータスに全魔力を集中させ、攻撃を回避。
その一撃が仲間に直撃した。
そこから決着までは早かった。
リザードマン同士で仲間割れが始まる。
俺は、特定の個体が有利になるよう再び前貸し。
互いを潰し合い、最後に残った1匹を俺が倒した。
だが、課題もある。
腕のかすり傷に触れる。
リザードマンの反撃で受けた傷だ。
ステータス変動で交わそうとしたが、その切り替えの隙を突かれた。
「やっぱ……変動時には隙が出る」
わずかな隙。
されど、戦闘では命取り。
それに――
「まだ理想の動きには届いていない」
理想は、敵の動きに合わせて即座に、ステータスを変動させること。
だが、今のままでは無理だ。
変動のたびに隙が生じてしまう。
何か、打開策はないか――
サバババッ。
「……この音は」
歩きながら考えていたとき、かすかに滝の音が聞こえた。
意識した途端、急に喉が渇く。
持参していた水は昨日のうちに飲み干していた。
それ以来、水は口にしていない。
歩きが、走りに変わる。
ざぶざぶと響く滝の音。
「はぁ……はぁ……。水だ」
滝壺にたどり着くと、俺は夢中で水を飲んだ。
乾いた喉が潤い、体に活力が戻る。
魔境の森は蒸し暑く、冷たい水がひときわありがたい。
ザババババババ!!!!
バシャッ……
「……?」
滝の音に混じる、水を弾く音。
俺の動きではない。
誰かがいるのか?
音のした方に目を向けると――
そこには、女が湯浴みをしていた。
「……桃髪」
脳裏に、あのポーションがよぎる。
誰かがいるのか?
音のした方に目を向けると――
そこには、女が湯浴みをしていた。
「……桃髪」
脳裏に、あのポーションがよぎる。