相棒をS級勇者に奪われた俺、スキル【力の前貸し】で勇者を破滅へ導く!~全てを負債地獄に叩き落とし、新たな魔王として君臨する!

第31話 本当の狙い

◇リザヤ

ビットナイトと闘う直前、ルーナに演技は得意かと聞いた。
自分の真の狙いを明かすべきか判断するために。

『......ごめん。少し苦手かも』

『分かった....それなら――』

自信が無さそうだったので見せかけの作戦。
誘惑に見せかけての騙し討ちという策を伝えた。

しかし、本当の狙いは――
この遺跡の魔物を倒すことで得られる、《《経験値》》にある。

俺はまず、分身に2つの命令をした。
1つは

『ビットナイトに見つからないよう物陰に潜め』

そして、2つ目は....。

『奴が去ったら、すぐに魔物達の狩りを開始しろ』

こう命令すれば、魔物の大量の経験値を密かに回収することができる。

しかし、この策も一つ大きな欠点があった。
分身が、遺跡の魔物相手に勝ち目がないということ。

――そう
獲物が無抵抗に停止するという奇跡が起きない限り。

それを現実にするためには、ビットナイトに停止というカードを切らせる必要がある。

だから俺は魔物達のセンサーをかく乱し、内乱を起こさせた。
奴に、停止せざるを得ない状況を作り上げる上げるために。

......これは正直賭けだ。
もし魔物全てを始末した場合、俺の作戦も水の泡に終わる。

だが、奴は停止させ賭けに勝った。
以前、ビットナイトから感じた仲間への情けか....。
遺跡の魔物達を大切に扱うという、予想が的中した。

おかげで遺跡の守護者たちは、分身達が一斉攻撃しても反撃しない。
無抵抗に狩られるだけのカモになり下がる。

そうして得た魔力を――
絶好のチャンスの今、

回収(レトリーブ)

俺のパワーアップを、ビットナイトが即座に感じ取る。
そして、即座に身を屈め防御の姿勢を取った。

奴は魔防が1万3千に対して、防御が7千。
物理攻撃が弱点だからこその、防衛本能だろう。
敵の意識は防御を補うことに集中している。

つまり、他の守りへの視野が狭まっているということ。
俺の魔力は既に、魔防突破圏内にいることに気づいていない。


俺は得た魔力、25,000を魔法に振る。
そして――

「黒炎流波!」

最大火力の魔法を放った。
漆黒の炎の柱がビットナイトを飲み込む――
だけではなく、その波動は遺跡の壁さえも貫いた。

....その直後、辺りの空気が一変する。
その魔法から発せられるあまりの熱に、俺の周りに蒸気が


「――――――――!!!!」


普段は奴が発しないような甲高い断末魔が聞こえる。
それから察するに、相当な灼熱地獄に違いない。
これなら奴も一溜まりもないはずだ。

だが、念には....念を。
MPが尽きる限界まで、炎を放ち続けた。

  ▽

魔法を放つのを辞めてから、数分が経過する。
漆黒の炎が完全消火したため、ビットナイトの姿が見え始めた。

....黒焦げになりながら、床に転がっている。
しかし、まだ奴の負債プロンプトは健在。
死んだら消えるため、気絶した状態だろう。

「....私、夢を見ているのかなぁ。ビットナイトを倒しただなんて」

ルーナが独り言のようにぼそりと呟いている。
....ここから先は、あまり彼女には見せない方がいいだろう。

「ルーナ、二つ頼みがある」

「.....?頼みって?」

「俺は今から、こいつの魔力を奪うつもりだ。だからルーナの毒ポーションをこちらに譲ってほしい」

...今から行うことを察したのか、彼女は複雑な表情をする。

「............」

しかし、最終的には俺に毒ポーションを渡してきた。

「.......それで、もう一つの頼みって...」

「奴が持っている情報についても聞き出したくてな。....だから万が一にも外部に聞かれないよう、遺跡の入り口を見張っててくれないか?」

ルーナは首を縦に振り、了承を示す。
....彼女は背を向け、入り口に向かって歩き出した。

「..........あの」

階段の所で、ルーナが振り返る。

「ビットナイトは最後まで油断ならないから......気を付けて」

彼女はそう言い残し、三階層へと上がっていった。

――さて
ルーナに言われた通り、油断せず徹底的にいくか。

地面に横たわる、ビットナイトの元へと歩み寄る。
そして、奴の腕を掴んだ。

(リース&バンス)

魔力を魔法から攻撃に移し、力を入れて引っ張る。

ぶちぶちと腕の筋線維が切れる音が鳴る。
さらに力を加えると、腕が引きちぎれた。
続いて、今度は足を掴み引っ張る。

「――――――」

.....ビットナイトの両脚をも引きちぎる。
これで、敵の四肢は全部無くなった。
不意打ちのリスクも消える。

「―――!?」

次の作業に取り掛かろうとした時、ビットナイトの瞼が開かれた。
そして、いち早く手足がない現状を認識する。

「......あなたの目的は何ですか。なぜ、すぐに殺さなかったのです?」

「あんたに、禁書について聞きたくてな。だから、まだ殺さねぇ」

「.......なるほど、やはり世界の秘密に関わることですか」

敵は薄々察していたのか、妙に落ち着いている。
この調子なら、上手く聞き出せるかもしれない。

「なぜルザード一族の書物が貴様ら魔王の手にある。どうやって手に入れた?」

「......さぁ。私にも、魔王様がどのような入手経路を使ったのかは知りません。ただ――」

ビットナイトは、話の途中で言いよどむ。
情報を明かすことに慎重な様子だ。
そのため、俺は手から火の玉を生み出し見せつけた。

「言わなければ、貴様の目を焼く」

ビットナイトは、脅しに対して臆するどころか笑った。

「.....これじゃ、どっちが悪か分かりませんね。まぁ....良いですよ、私はどの道死ぬのだから話してあげます」

その応えを聞き、俺は炎を引っ込める。

「あなたは、魔王が禁書に目を付けた理由を何だと思いますか?」

「...理由?世界の隠された真実を知る為だろ」

「いいえ。......魔力の”搾取”から脱却するためです」

.....魔力の搾取?
何者かが魔王の魔力を吸い取っているのだろうか?
全く見当がつかない。

「何たって、世界は経験値システムというものに支配されているのですから」

「.....システムが支配って、どういうことだ?」
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