相棒をS級勇者に奪われた俺、スキル【力の前貸し】で勇者を破滅へ導く!~全てを負債地獄に叩き落とし、新たな魔王として君臨する!

第6話 試行錯誤

再度自分のステータスを見直す。
何かヒントが隠されているかもしれない。

最後まで目を通したとき、スキル名に目が止まる。
その名称に違和感を覚えた。

()()()()()

「前借り」ではなく、「前貸し」だ。
ここで、一つの仮説が浮かぶ。

もし本来の能力が、力を貸すことで利子を得ることだとしたら。
....負債を負うのは自分ではなく相手。

この前貸しを上手く活用できれば——
返せるかもしれない。

確定ではない、あくまで仮説の話。
だが、絶望から一筋の光が見えてきた。

……では、どう魔力を奪うか?
前貸しするということは、相手に魔力を渡すことになる。
それなら——

すでに前借りした魔力を一旦、別の相手に貸し出す。
その後、貸した相手から利子を回収する。
つまり、魔力の「又貸し」。

これなら、魔力を辛うじて回収できるかもしれない。
だが、前提条件が一つある。

それは——利子の高さが複数の要素で決まること。

この案は、又貸しした相手との利子の差。
つまり利ザヤで魔力を増やす計画。
もし利子の高さが固定なら、利ザヤは生じず、魔力は増えない。

「...............」

考えろ。
他に懸念すべき点はないか。
.................................................
..........................
.................

「ブオオオオオオオオオオオオ!!!」

後ろから、魔物が接近してきた。
豚のような頭と人型の体が特徴の、オークだ。
どうやら、目的地に到達したらしい。

魔境の森に。

「......試す機会がきたか」

確か、スキルを発動するには呪文を唱えるんだったな。

力の前貸し(バンス)

《返済可能な基準を大きく下回っています。魔力(エナジー)が100未満の場合、貸し出しできません》

スキルの説明が表示される。

「.........はっ!?」

どういうことだ?
予想が大きく外れ、冷や汗が流れる。
事態は予想以上に深刻だった。

それは、前借りした100魔力(エナジー)のこと。

....なぜか負債として、元本に計上されている状況。
だから、前借りの力はまだ有していると思っていた。
しかし、魔力(エナジー)が100未満だと分かり、その線も消える。
だとしたら、前借りした魔力は一体どこにいった?

「!?」

……待てよ。
前借りする度に、元本分も余分に返すということは....。
借りた段階で最低でも利子100%を負うことを意味する。
借りた魔力が消えるという謎の仕様が影響しているせいで。

これは、前の想定よりかなりキツイ。

ズドドドドドドドドド!!

オークが咆哮し、斧を振り上げる。


「....今は目の前の問題を片付けねぇとな」

先の未来を考える余裕は、今はない。

オークは自分より格上だ。
だから、再び前借りするしか方法がない。
正直、負債に負債を重ねるのは気が引ける。
だが、これも復讐のためだ。
多少の茨の道も覚悟して進まねば。

前借りして返済する場合、対象は2体必要だ。

だが、目の前にいるのは一体だけ。

「ここは、一旦——」

相手から逃げるように森の奥へと走る。
当然、オークも追ってきた。
全速力で走るも、その差は縮まっていく。

振り返ると、オークがすぐ側まで迫っていた。
——くそっ、こうなったら....!!

「.....ファイヤーボール!」

一か八か、貴重なmpを消費して火の魔法を放つ。

すると予想外にも、オークはかなり焦りながら攻撃を交わした。
隙ができたおかげで、距離が開く。

「ブォォォォォォォォッ!!」

怒声に振り返ると、奴が斧を振り回して俺を威嚇する。

.....これだ!

まず、俺は近くの木まで猛ダッシュする。
そして、逃げる手段を逃走から木登りに切り替える。
相手が届かない距離までよじ登る。

相手は斧を持っている。
武器を捨てなければ木登りは無理だ。

さぁ、どう動く?

しばらく俺を見つめるオーク。
そして、行動を開始した——

ガッ!!バキッ!!メキメキ!!

斧で木をなぎ倒しにかかる。

どうする?
木が折れる前に下に降りるか?
…否、待ち構えているオークに捕まるだけだ。
でも、木が折れるのを待っても、結局同じだ。

他に逃げる方法は?

その時だった。

バキッバキッ!!

木が傾き始めた。

木の先端が他の木に近づく。
別の木に飛び移れるかもしれない。

俺は木の頂上を目指して進む。
木が傾いて、他の木との距離が近づく。

バキッ!!メキメキ.......

もう一振りされたら、完全に折れる……
だが同時に、最も傾いて他の木に近づいた。

そのタイミングを見計らって、正面の木に飛び移る。

「ブオオオオオオオオオオ!!!」

振り出しに戻り、完全に頭に来たのか、叫び始めた。

しばらく経つと、別のオークがこちらに向かってやってくる。

「やっと仲間を呼んだな」

これまで仲間を呼ばなかった理由は、獲物を独り占めしたかったからだろう。

通常、仲間を呼ぶのは最悪のパターン。
だがスキルの発動には2体必要だ。
今の自分にとっては、望ましい状況。

俺は、手前にいるオークがギリギリ届かない距離まで木を降りる。

.............ここからが勝負だ。
まず、木で待ち構えているオークをどうにかしなければ。
仲間のオークが挟み撃ちしてくる前に……

力の前借り(リース)!」

《力の前借りには対象が2体必要です。》

否定の説明が入る。
スキル発動には2体がある程度近づく必要があるのか。

それでも——

力の前借り(リース)!」

力の前借り(リース)!」

何度もスキルを唱え続ける。
スキル発動の距離。
それも最も離れた位置での発動を逃さないために。

力の前借り(リース)!」

力の前借り(リース)!」

《力の前借りを発動します。》

.......いまだ!!
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