相棒をS級勇者に奪われた俺、スキル【力の前貸し】で勇者を破滅へ導く!~全てを負債地獄に叩き落とし、新たな魔王として君臨する!
第9話 賭け
「...!?」
オークが一瞬ひるむ。
初めて俺が先手を打ったからだ。
だが、すぐに気を立て直し、迎え撃ってきた。
スッ!シャッ!
ズガンッ!!
最後に振るった攻撃が木にヒット。
オークは鉈を木から外そうとする。
その瞬間、腹に大きな隙が生じた。
「はあぁぁ!!」
ザンッ!!
敢えて攻撃ゼロの状態で剣を突く。
予想通り、剣は硬い皮膚に弾かれた。
サッ――
反撃される前に距離を取る。
攻撃ゼロの状態で剣を突いた理由は、MP消費を抑え、相手の油断を誘うためだ。
魔物の大半は相手の魔力(エナジー)を察知できる。
オークの視点に立つと...。
目の前の人間は、オークより魔力が少ない格下。
故に、格下のスピードが速かったのも、こう判断してたはず。
「こいつの魔力は速さに特化している」と。
その判断を後押しするために、攻撃ゼロでアタック。
俺は敵に値しないと、認識してくれればいいが....。
この策には一つの穴がある。
オークが仲間を倒されたことをどう捉えているかだ。
記憶力があれば、攻撃ゼロの人間がどう倒したのか疑問に思うだろう。
そこから、ステータス変動を見抜かれるかもしれない。
「さぁ、どう反応する?」
ニヤリ。
オークは余裕の笑みを浮かべ、何もせずにただ立っている。
そして—
ぽたぽたとよだれを垂らし始める。
俺を敵ではなく、餌として認識したようだ。
「賭けには勝ったか」
次の問題だ。
格上をどう一撃で倒すか。
奴の弱点は何だ?
奴の魔力はおよそ170。
平均で1ステータスあたり34。
だが、オークも生き物。
ステータスには偏りがある。
オークの攻撃は、凄まじいものがあった。
よって攻撃に魔力が集中していそうだ。
俺の魔力60を攻撃に振って、何とか対抗できる火力を持つ。
高く見積もって攻撃は60ぐらいか。
速さは60に到底及ばず、むしろ遅いぐらいだったので、20くらい。
魔法は未確認だが、打点となるならとっくに使っているはず。
つまり、他のステータスに寄っていると見た方がいい。
だから魔法は0と仮定する。
攻撃、速さ、魔法、3つ合わせて80程度。
守りのステータスはそれを差し引くから、防御、魔防の合計は90。
対して、俺の放てる火力は60。
もし、奴の防御と魔防のどちらかにステータスが偏っていたら....。
奴の弱点の方を突けなかった場合、俺の死が確定する。
.......くそっ!!
ここまで考えて最後は結局、運なのか?
どちらのステータスが弱いかを試すにもmpが必要。
だが、そんな余力はもう残っていない。
俺は......。
魔法、攻撃、どちらに全魔力を賭ければいい!?
「...ブオォォォォォォォ!!」
空腹に耐えられなくなったオークが猛スピードで向かってくる。
オークの動きは、戦闘から狩りへと変化していた。
.....駄目だ、まだ奴の弱点のステータスが分かっていない。
今、近づかれるわけにはいかない。
俺は再び、オークから全速力で逃げる。
振り返ると、追手は餌を逃がすまいと血眼で迫ってくる。
――あれっ?さっきも似たような出来事が...
たしか....この森で最初に遭遇した方のオークとも追いかけっこをした。
あの時も、こんな風に距離を詰められて...。
ファイヤーボールを放ち、オークが動揺したおかげで捕まらなかった。
「.......そうか!奴は魔法を恐れていた」
つまり、魔法をガードする魔防が低い可能性が高い。
....魔法を恐れていたオークと今の追手は別個体だ。
だが、奴らと相対して大きな差異はなかった。
つまり、ステータスも似通っていてもおかしくない。
俺は立ち止まり、追ってくるオークと向かい合った。
近づくにつれて、奴は大きく口を開け迫る。
目の前に餌があるように感じていることだろう。
――今だ
魔法を決して避けられない、距離までひきつけた。
あらかじめ流動させていた魔力が、魔法のステータスに行き渡る。
そして奴の大きな口の中を狙って...
「ファイヤーボール!」
炎がオークの喉奥を焼き尽くす。
「お前の判断は正しかった」
ドサッ!
黒こげになったオークが倒れる。
「俺にステータス変動の能力がなければ…の話だが」
...指先が痺れている。
MPが尽きたせいだ。
魔力を使い果たした時の虚脱感が、全身を襲う。
しかし、何とか踏ん張ってオークに近づいた。
倒れたオークの負債プロンプトを見る。
もし利子が止まっていたら、すべてが無駄になってしまうが…
「...よし。気絶しても止まっていないな。」
ついでに相手の利子を確認したところ、まだ基準の数値には足りていない。
今、魔力を回収しても損をする。
「もっと利子を寝かすか」
...できればあと2時間は、利子を増やしたいところだが。
日は真上を過ぎ、徐々に傾き始めている。
夜になると視界が制限される。
だから明るい内に集めたい。
だが、今の魔力事情に加え、先の戦闘でMPが限界を迎えた。
……仕方ない。
「MP回復がてら、少し休もう」
▽
2時間が経過した。
「回収《レトリーブ》」
かなり離れた場所から、漆黒色の魔力が流れ込んでくる。
「...この魔力、俺のと同じ色?」
なぜか、オークから同じ色の魔力が流れてくる。
オークの魔力の色は緑だったはず。
前貸ししたことで魔力の色が変化したのか?
「まだ謎が多いな、このスキル」
《回収完了いたしました。》
確認のため、ステータスを開く。
―――――――
リザヤ
Eランク
Lv1(永久)
魔力(エナジー) 164(+134
5大ステータス
攻撃 44 (+36
防御 22 (+18
魔法 27 (+22
魔防 16 (+13
速さ 55 (+45
ポイント残量
MP20/33
HP37/60
負債元本 200魔力(エナジー)
本日の利子 67.14魔力(エナジー)
負債合計 267.14魔力(エナジー)
スキル 力の前貸し
―――――――
...今回の利子の返済がされていない。
既に支払えるだけの魔力を手に入れたのだが....
代わりに本来利子返済に充てられる魔力がステータスに反映されている。
....だとしたら、利子を支払う瞬間はいつだ?
「....もしかして、日付が変わる直前」
その場合....千載一遇のチャンスかもしれない。
日付が変わるまで、返済に当てられたハズの魔力を前貸しに使えるためだ。
これなら、前借りで借りて又貸しという手順を踏まなくていい。
前借りに頼らなければ、余分な元本の負債まで背負わずに済む。
「魔力が効率的に集められる」
日付が変わるまで、どれだけ魔力を集められるかが肝。
現在、ちょうど夕暮れ時。
剣を握り締め、駆け出す。
.........................
............
...。
もうすぐ日付が変わる深夜。
魔物との戦いに限界だったが、運良く小さな洞穴を発見。
中に入ると、藁のベッドを見つける。
.....もう立つ力も無い。
藁のベッドを作った人には悪いが、利用させてもらった。
「ふぅ......」
ベッドに寝そべりながら、ステータスを開く。
ステータスに浮かぶ「負債合計:267.14」の文字。
対して、俺の魔力は270。
俺は溜め息を漏らした。
「......ギリギリだったな」
やっと掴んだ、わずか3の黒字。
それは、地獄の底で手にした命綱だった。
ひとまず、日付が変わる前の今なら完済できるが...
「...完済はもう少し先延ばしにするか」
前貸しで得た魔力を完済に使うと、魔力は残り僅かしか残らない。
それでは、この魔境の森で生存は不可能。
だから、完済は残った魔力でも戦えるレベルになるまで控えた方がいい。
「まぁ、その分より多くの利息を払う羽目になるが」
仕方ない。
魔力不足で危険な目に遭うよりはマシだ。
最悪を想定すると、完済の先延ばし以外に生存の道はない。
「.........」
...それにしても、このスキル。
元本分の魔力がどこに消えたのか、全く見当がつかない。
元本まで余分に負担しなければならない理由。
前借りした魔力は消滅するから、だと思っていた。
しかし、違った。
前貸しした力を回収した際、元本の魔力が最初に返ってきた。
予想が外れたので、貸した魔物の負債プロンプトの詳細を確認した。
すると、返《・》されたはずの元本分まで負債として計上されていた。
このことから、前借りした100エナジーも同様だろう。
前借りした魔力を使えなくなった時点で、元の所有者に返還されていたのだ。
それにも関わらず、スキルは元本100エナジーのおかわりを要求した。
そのせいで、返済困難な負債地獄へ陥ったわけだが。
ともかく、おかわりの魔力は回収された際、どこに――
《600魔力(エナジー)の回収が達成されました。基準値を満たしたため、スキルのレベルがランクアップします。》
オークが一瞬ひるむ。
初めて俺が先手を打ったからだ。
だが、すぐに気を立て直し、迎え撃ってきた。
スッ!シャッ!
ズガンッ!!
最後に振るった攻撃が木にヒット。
オークは鉈を木から外そうとする。
その瞬間、腹に大きな隙が生じた。
「はあぁぁ!!」
ザンッ!!
敢えて攻撃ゼロの状態で剣を突く。
予想通り、剣は硬い皮膚に弾かれた。
サッ――
反撃される前に距離を取る。
攻撃ゼロの状態で剣を突いた理由は、MP消費を抑え、相手の油断を誘うためだ。
魔物の大半は相手の魔力(エナジー)を察知できる。
オークの視点に立つと...。
目の前の人間は、オークより魔力が少ない格下。
故に、格下のスピードが速かったのも、こう判断してたはず。
「こいつの魔力は速さに特化している」と。
その判断を後押しするために、攻撃ゼロでアタック。
俺は敵に値しないと、認識してくれればいいが....。
この策には一つの穴がある。
オークが仲間を倒されたことをどう捉えているかだ。
記憶力があれば、攻撃ゼロの人間がどう倒したのか疑問に思うだろう。
そこから、ステータス変動を見抜かれるかもしれない。
「さぁ、どう反応する?」
ニヤリ。
オークは余裕の笑みを浮かべ、何もせずにただ立っている。
そして—
ぽたぽたとよだれを垂らし始める。
俺を敵ではなく、餌として認識したようだ。
「賭けには勝ったか」
次の問題だ。
格上をどう一撃で倒すか。
奴の弱点は何だ?
奴の魔力はおよそ170。
平均で1ステータスあたり34。
だが、オークも生き物。
ステータスには偏りがある。
オークの攻撃は、凄まじいものがあった。
よって攻撃に魔力が集中していそうだ。
俺の魔力60を攻撃に振って、何とか対抗できる火力を持つ。
高く見積もって攻撃は60ぐらいか。
速さは60に到底及ばず、むしろ遅いぐらいだったので、20くらい。
魔法は未確認だが、打点となるならとっくに使っているはず。
つまり、他のステータスに寄っていると見た方がいい。
だから魔法は0と仮定する。
攻撃、速さ、魔法、3つ合わせて80程度。
守りのステータスはそれを差し引くから、防御、魔防の合計は90。
対して、俺の放てる火力は60。
もし、奴の防御と魔防のどちらかにステータスが偏っていたら....。
奴の弱点の方を突けなかった場合、俺の死が確定する。
.......くそっ!!
ここまで考えて最後は結局、運なのか?
どちらのステータスが弱いかを試すにもmpが必要。
だが、そんな余力はもう残っていない。
俺は......。
魔法、攻撃、どちらに全魔力を賭ければいい!?
「...ブオォォォォォォォ!!」
空腹に耐えられなくなったオークが猛スピードで向かってくる。
オークの動きは、戦闘から狩りへと変化していた。
.....駄目だ、まだ奴の弱点のステータスが分かっていない。
今、近づかれるわけにはいかない。
俺は再び、オークから全速力で逃げる。
振り返ると、追手は餌を逃がすまいと血眼で迫ってくる。
――あれっ?さっきも似たような出来事が...
たしか....この森で最初に遭遇した方のオークとも追いかけっこをした。
あの時も、こんな風に距離を詰められて...。
ファイヤーボールを放ち、オークが動揺したおかげで捕まらなかった。
「.......そうか!奴は魔法を恐れていた」
つまり、魔法をガードする魔防が低い可能性が高い。
....魔法を恐れていたオークと今の追手は別個体だ。
だが、奴らと相対して大きな差異はなかった。
つまり、ステータスも似通っていてもおかしくない。
俺は立ち止まり、追ってくるオークと向かい合った。
近づくにつれて、奴は大きく口を開け迫る。
目の前に餌があるように感じていることだろう。
――今だ
魔法を決して避けられない、距離までひきつけた。
あらかじめ流動させていた魔力が、魔法のステータスに行き渡る。
そして奴の大きな口の中を狙って...
「ファイヤーボール!」
炎がオークの喉奥を焼き尽くす。
「お前の判断は正しかった」
ドサッ!
黒こげになったオークが倒れる。
「俺にステータス変動の能力がなければ…の話だが」
...指先が痺れている。
MPが尽きたせいだ。
魔力を使い果たした時の虚脱感が、全身を襲う。
しかし、何とか踏ん張ってオークに近づいた。
倒れたオークの負債プロンプトを見る。
もし利子が止まっていたら、すべてが無駄になってしまうが…
「...よし。気絶しても止まっていないな。」
ついでに相手の利子を確認したところ、まだ基準の数値には足りていない。
今、魔力を回収しても損をする。
「もっと利子を寝かすか」
...できればあと2時間は、利子を増やしたいところだが。
日は真上を過ぎ、徐々に傾き始めている。
夜になると視界が制限される。
だから明るい内に集めたい。
だが、今の魔力事情に加え、先の戦闘でMPが限界を迎えた。
……仕方ない。
「MP回復がてら、少し休もう」
▽
2時間が経過した。
「回収《レトリーブ》」
かなり離れた場所から、漆黒色の魔力が流れ込んでくる。
「...この魔力、俺のと同じ色?」
なぜか、オークから同じ色の魔力が流れてくる。
オークの魔力の色は緑だったはず。
前貸ししたことで魔力の色が変化したのか?
「まだ謎が多いな、このスキル」
《回収完了いたしました。》
確認のため、ステータスを開く。
―――――――
リザヤ
Eランク
Lv1(永久)
魔力(エナジー) 164(+134
5大ステータス
攻撃 44 (+36
防御 22 (+18
魔法 27 (+22
魔防 16 (+13
速さ 55 (+45
ポイント残量
MP20/33
HP37/60
負債元本 200魔力(エナジー)
本日の利子 67.14魔力(エナジー)
負債合計 267.14魔力(エナジー)
スキル 力の前貸し
―――――――
...今回の利子の返済がされていない。
既に支払えるだけの魔力を手に入れたのだが....
代わりに本来利子返済に充てられる魔力がステータスに反映されている。
....だとしたら、利子を支払う瞬間はいつだ?
「....もしかして、日付が変わる直前」
その場合....千載一遇のチャンスかもしれない。
日付が変わるまで、返済に当てられたハズの魔力を前貸しに使えるためだ。
これなら、前借りで借りて又貸しという手順を踏まなくていい。
前借りに頼らなければ、余分な元本の負債まで背負わずに済む。
「魔力が効率的に集められる」
日付が変わるまで、どれだけ魔力を集められるかが肝。
現在、ちょうど夕暮れ時。
剣を握り締め、駆け出す。
.........................
............
...。
もうすぐ日付が変わる深夜。
魔物との戦いに限界だったが、運良く小さな洞穴を発見。
中に入ると、藁のベッドを見つける。
.....もう立つ力も無い。
藁のベッドを作った人には悪いが、利用させてもらった。
「ふぅ......」
ベッドに寝そべりながら、ステータスを開く。
ステータスに浮かぶ「負債合計:267.14」の文字。
対して、俺の魔力は270。
俺は溜め息を漏らした。
「......ギリギリだったな」
やっと掴んだ、わずか3の黒字。
それは、地獄の底で手にした命綱だった。
ひとまず、日付が変わる前の今なら完済できるが...
「...完済はもう少し先延ばしにするか」
前貸しで得た魔力を完済に使うと、魔力は残り僅かしか残らない。
それでは、この魔境の森で生存は不可能。
だから、完済は残った魔力でも戦えるレベルになるまで控えた方がいい。
「まぁ、その分より多くの利息を払う羽目になるが」
仕方ない。
魔力不足で危険な目に遭うよりはマシだ。
最悪を想定すると、完済の先延ばし以外に生存の道はない。
「.........」
...それにしても、このスキル。
元本分の魔力がどこに消えたのか、全く見当がつかない。
元本まで余分に負担しなければならない理由。
前借りした魔力は消滅するから、だと思っていた。
しかし、違った。
前貸しした力を回収した際、元本の魔力が最初に返ってきた。
予想が外れたので、貸した魔物の負債プロンプトの詳細を確認した。
すると、返《・》されたはずの元本分まで負債として計上されていた。
このことから、前借りした100エナジーも同様だろう。
前借りした魔力を使えなくなった時点で、元の所有者に返還されていたのだ。
それにも関わらず、スキルは元本100エナジーのおかわりを要求した。
そのせいで、返済困難な負債地獄へ陥ったわけだが。
ともかく、おかわりの魔力は回収された際、どこに――
《600魔力(エナジー)の回収が達成されました。基準値を満たしたため、スキルのレベルがランクアップします。》