Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

5、止められない(3)

 こくんとうなずと腕が離されて正面から、抱きしめられる。
 背の高い彼に、すっぽりと包み込まれ顎を捕らえられて唇が重なる。
 軽くなぞるキスが、余韻を残しては離れ、深く濃厚なキスに代わる。
 甘いまどろみの中で体の力が抜けていく。
 涼の背中に爪を立ててしがみついた。
 腰を支えられ、腕を引かれる。
 ベッドの上に、押し倒されて心臓が暴れ始める。
 乱暴ではないが、涼の強い意志を感じた。
 菫子は彼の顔に指先を伸ばして、触れてみた。
「……一回抱いたら、歯止め利かなくなるって分かってたのにな」
 せつなげな響きが胸を打つ。
「私、色気なんてないのに」
「心配せんでも、俺に抱かれている時の菫子は最高に色っぽいで」
 かあっと頬が熱くなる。
「本当?」
「菫子が綺麗になるのは俺の腕の中や。それ以外は認めん」
「……っ。自信満々なんだから。私にもその余裕を分けてほしいわ」
 唇が、重なって吐息を奪った。
「余裕ないくらいで丁度ええ。俺が、ちゃんとリードするから」
 耳元で囁かれて、ぞくりとする。肌の熱が一気に高まった。
「この腕の中で生まれ変われるのね」
 何度もキスをし、長い口づけが続く中で、
 熱に浮かされたように呟く。
 どうして、こんな時だけ、素直に彼に応えられるのだろう。
 今までの菫子は一度消えて、新しく生まれた。
 狂うほどの熱の中で、生身の女になった。
 羽をもがれた痛みは、決して消えることがなくて、
 それでも涼だから、受け入れられた。
「菫子、愛してる」
 吸いこまれそうな深い瞳に見つめられる。
 首に腕をまわして、涼に顔を近づけた。
「涼ちゃんを愛してるわ」
 耳元で、少しでも艶めいて聞こえてほしいと願いながら告げる。
 既に床に放られた服が、色鮮やかに目に映る。
 カーテンも閉め切っているが、昼間なので羞恥を感じて仕方がない。
「……涼ちゃん。やっぱり明るい」
「気にすんな。どうせ寝て起きたらとっくに夜や」
 恨みがましげに睨んでみても、
涼を煽ることになるだけということに菫子は気がつかない。
 嫌なわけではないのだ。
 意志を持って、行動しているのだ。
 涼をもっと感じたくて知りたくて。
 繋がれた手に力がこもる。 
 炎が宿った手のひらは、お互い同じだ。
忍び笑いながらキスをする。
「これから先、菫子以外抱かんから」
 思わぬ発言に虚(きょ)を突かれる。
「そんな簡単に決めちゃっていいの。まだ早いんじゃ」
「菫子は、俺以外に抱かれてもええって? 」
「……涼ちゃん以外の人と、
そんなことするなんて怖くて想像できない。
 でも涼ちゃんは、男の人だし……」
「だから、どないやねん」
 菫子があっ、と思う間に下着が取り払われて床に投げられる。
 肌と肌が直接に触れ合って、震えた。
 胸の高鳴りを知らせるように。

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