Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
7、朝帰り(2)
指を向けられた先にあった赤い痕に、ばっと頭を机に伏せた。
鋭い指摘に悶絶(もんぜつ)してしまう。
(涼ちゃん……後で覚えておきなさいよ!)
一番後ろでよかった。近くに人はまばらだし 誰も会話を聞いていない。
それを承知の上で伊織も真顔で指摘したのだ。
ブラウスのボタンを第一ボタンまできっちり留めた。
「……伊織と涼ちゃん、どっちが意地悪なのか知りたいわ」
「私も草壁くんも弄りがいがあるって分かってるのよね」
「……愛情表現でいいの?」
恨めしげに顔を上げた菫子は伊織に視線を向けた。
「それは当然でしょ」
にこっと微笑まれて、何も言えなくなった。
「あれからまた色々あったのね。
私の可愛い菫子が、大人の階段を一気に駆け上がってしまったわ」
芝居がかった仕草に、吹き出した。
楽しんでいるならいい。
(ネタにされても明るい気分でいられるならいくらでもどうぞ)
菫子は広い心で受け止めている。
時折おどけて見せる伊織は、実際は菫子よりずっと落ち着いている。
頑(かたく)なに涙を隠しているだけなのも知っている。
(二人の心のつながりは崇高なもので長い時間を過ごしている分、
絆はかけがえのないものだ)
「色々あったわ。はっきり言ってついていくのがやっとよ。
でも、涼ちゃんでよかったってしみじみ思ってる」
「彼は優しいのね」
「嫌になるくらいにね」
「菫子の突っ張ったところも含めて受け入れてくれているんだろうから、
彼でよかったと私もしみじみ思うわ。安心して任せられるもの」
「伊織に信用されているんだったら間違いないのかも」
「疑問形? 草壁君がかわいそうよ」
「いいの。調子に乗るし! 私は飴と鞭(むち)戦法でいくの」
「ぷっ……どこまでその宣言続くかしら?」
「気合いは十分だから大丈夫」
拳を固めた菫子に伊織もまた笑う。
授業が終わり、二人は校門で別れた。
菫子はバイトへ、伊織は彼の入院している病院へと向かった。
「いらっしゃいませー」
顔もだが、声の笑顔も心がけている。
それは、研修期間中に教えられたことだったが、
笑顔というのは存外難しいものだと感じる。
営業用であるのは間違いないが、自然に笑えるのが一番だ。
菫子は、バイト先の住所は涼に教えていない。
もし来られたら困るとの思いからだったが、
付き合い始めてしまったため余計そう感じている。
ここには別の大学に通う同学年の同僚がいる。
しかも性別は、男。
……仕事だから、変な誤解はされないと思うが、
案外独占欲が強そうだから何か怖いなあと菫子は、掃き掃除しながら考える。
鋭い指摘に悶絶(もんぜつ)してしまう。
(涼ちゃん……後で覚えておきなさいよ!)
一番後ろでよかった。近くに人はまばらだし 誰も会話を聞いていない。
それを承知の上で伊織も真顔で指摘したのだ。
ブラウスのボタンを第一ボタンまできっちり留めた。
「……伊織と涼ちゃん、どっちが意地悪なのか知りたいわ」
「私も草壁くんも弄りがいがあるって分かってるのよね」
「……愛情表現でいいの?」
恨めしげに顔を上げた菫子は伊織に視線を向けた。
「それは当然でしょ」
にこっと微笑まれて、何も言えなくなった。
「あれからまた色々あったのね。
私の可愛い菫子が、大人の階段を一気に駆け上がってしまったわ」
芝居がかった仕草に、吹き出した。
楽しんでいるならいい。
(ネタにされても明るい気分でいられるならいくらでもどうぞ)
菫子は広い心で受け止めている。
時折おどけて見せる伊織は、実際は菫子よりずっと落ち着いている。
頑(かたく)なに涙を隠しているだけなのも知っている。
(二人の心のつながりは崇高なもので長い時間を過ごしている分、
絆はかけがえのないものだ)
「色々あったわ。はっきり言ってついていくのがやっとよ。
でも、涼ちゃんでよかったってしみじみ思ってる」
「彼は優しいのね」
「嫌になるくらいにね」
「菫子の突っ張ったところも含めて受け入れてくれているんだろうから、
彼でよかったと私もしみじみ思うわ。安心して任せられるもの」
「伊織に信用されているんだったら間違いないのかも」
「疑問形? 草壁君がかわいそうよ」
「いいの。調子に乗るし! 私は飴と鞭(むち)戦法でいくの」
「ぷっ……どこまでその宣言続くかしら?」
「気合いは十分だから大丈夫」
拳を固めた菫子に伊織もまた笑う。
授業が終わり、二人は校門で別れた。
菫子はバイトへ、伊織は彼の入院している病院へと向かった。
「いらっしゃいませー」
顔もだが、声の笑顔も心がけている。
それは、研修期間中に教えられたことだったが、
笑顔というのは存外難しいものだと感じる。
営業用であるのは間違いないが、自然に笑えるのが一番だ。
菫子は、バイト先の住所は涼に教えていない。
もし来られたら困るとの思いからだったが、
付き合い始めてしまったため余計そう感じている。
ここには別の大学に通う同学年の同僚がいる。
しかも性別は、男。
……仕事だから、変な誤解はされないと思うが、
案外独占欲が強そうだから何か怖いなあと菫子は、掃き掃除しながら考える。