Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

8、マグカップ(4)

 確認を取って冷蔵庫を開ける。
 夕食の準備が整って、暫く待っているとチャイムが鳴り響いた。
 玄関へ向かう涼の後ろに、菫子はそっとついていく。
「いらっしゃーい」
 関西なまりの歓迎に、菫子は笑い転げそうになった。
「お邪魔します」
 伊織はいちいち過敏に反応せず、普通に受け流している。
 差し出されたスリッパを履いて遠慮がちに、上がった。
 涼と菫子で伊織を挟む形で進む。
「お姉さん、聞いてーな。この子、くっそーなんて言ったんやで」
(何その軽口)
 突っこもうにも突っこめない。
「まあ。菫子、口が悪いわよ」
「伊織、ノリノリなのね……」
「ノれってサインが出てたから」
「永月、グー」
 菫子は、涼と一緒に指を立ててみた。
 それは見事にタイミングが合っていた。
「……突きぬけちゃってる感じね」
 菫子は首をかしげ、涼は軽やかに笑った。
 夕食は、楽しく進み、食後、部屋で伊織が持ってきた
ジャスミンティーを注ぎ、スナック菓子を広げた。
「これ、お花が開くのね。綺麗」
「そのまま飲んで大丈夫よ」
 菫子は、言われた通りに、マグカップを口に運ぶ。
 伊織は予備のシンプルなカップだが、
 菫子は何故か、専用のカップが用意されていた。
またもや苺柄なので涼が苺好きなのだと疑いたくなってきた。
 





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