Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
番外編「額の上に友情のキス」(3)
乱暴に扱ってしまいいけないと思っても遅い。
呆然として、手を伸ばす。
目線を上げれば、涼と目が合った。
強い眼差しにぎくりとする。
吸い寄せられるように菫子を捉えていた。
(絶対、変に思われた。過剰反応してしまった自分が憎い)
手をつないだことだって何度もある。
恋愛感情で意識したものではなくごく自然に友達として触れた。
なのに、何故今更動揺するのか。
この動揺と胸の高鳴りが、聞こえていたら怖い。
風の音やら何やらで、決して静かではないのだから聞こえるはずもないけれど。
菫子は、少しずつ冷たくなってきた風が、火照った頬を冷ましてくれることだけを願った。
「突然手を触れられたら驚くじゃない」
「傷つけたんかと思ったんや。
手が震えてるのは泣いてるんやないかと思って、
気づいたら握っとった。嫌な思いさせてたらごめんな」
苦笑する涼に菫子はかぶりを振った。
嫌な思いなんてしているはずない。
ああ、頭がもやもやしてくる。
今が続けばいいと願った七夕の日を思い出した。
「ねえ涼ちゃん」
「ん?」
菫子は涼に顔を近づけた。今までにないくらい近い距離で彼の顔を見た。
座ったままなら、身長差を何となく補えている。
涼は身じろぎもせず様子を見ている。
腹が立つくらい冷静だ。
(平常心を取り戻そうと必死になってる自分が滑稽すぎる)
目を瞑って、額に触れる。
一秒経つか経たないかの時間、菫子の唇と涼の額が触れ合っていた。
菫子は相手が反応しない内に、さっと離れてベンチから距離をとり涼を見た。
誇らしげにさえ見える笑顔を浮かべて。
満足だった。分からない程度に口の端を持ち上げた。
「菫子?」
「何でもないわ」
「何でもないんか? 」
涼は菫子の唐突な行動の意味を確かめようとしている。
よほど虚を突かれたものだったのだろう。
単なる友だちに向けてのキス。
ささやかな贈り物に過ぎないのだ。
相手の反応なんてどうでもよくて、何も思われないほうがよいのだ。
「友情の証よ」
「傑作(けっさく)やな」
涼は楽しげに笑っていた。
「嬉しいでしょ」
「返した方がええか」
とんでもなかった。
お返しなんて望まない。
聞いてくれずにされてたら、これから顔を合わせるのに困った所だった。
自分がするのと相手にされるのとでは微妙にニュアンスが違う。
「気持ちをありがたくもらっておくわね」
にっと笑ったら、涼も笑い返した。
それから、菫子はぱたぱたと走ってその場を去った。
(ごめんね。私は嘘つきなの。
ていのいい口実が欲しかったの)
友情だと気持ちをすり替えていれば、自分が楽だから。
嫌いになんてなれない。友達として好きなだけじゃない。
自分の気持ちさえ見誤らなければいい。
ずるい女になっているとしても。
菫子は、涙を流すまいと笑顔で校門を潜り抜けた。
呆然として、手を伸ばす。
目線を上げれば、涼と目が合った。
強い眼差しにぎくりとする。
吸い寄せられるように菫子を捉えていた。
(絶対、変に思われた。過剰反応してしまった自分が憎い)
手をつないだことだって何度もある。
恋愛感情で意識したものではなくごく自然に友達として触れた。
なのに、何故今更動揺するのか。
この動揺と胸の高鳴りが、聞こえていたら怖い。
風の音やら何やらで、決して静かではないのだから聞こえるはずもないけれど。
菫子は、少しずつ冷たくなってきた風が、火照った頬を冷ましてくれることだけを願った。
「突然手を触れられたら驚くじゃない」
「傷つけたんかと思ったんや。
手が震えてるのは泣いてるんやないかと思って、
気づいたら握っとった。嫌な思いさせてたらごめんな」
苦笑する涼に菫子はかぶりを振った。
嫌な思いなんてしているはずない。
ああ、頭がもやもやしてくる。
今が続けばいいと願った七夕の日を思い出した。
「ねえ涼ちゃん」
「ん?」
菫子は涼に顔を近づけた。今までにないくらい近い距離で彼の顔を見た。
座ったままなら、身長差を何となく補えている。
涼は身じろぎもせず様子を見ている。
腹が立つくらい冷静だ。
(平常心を取り戻そうと必死になってる自分が滑稽すぎる)
目を瞑って、額に触れる。
一秒経つか経たないかの時間、菫子の唇と涼の額が触れ合っていた。
菫子は相手が反応しない内に、さっと離れてベンチから距離をとり涼を見た。
誇らしげにさえ見える笑顔を浮かべて。
満足だった。分からない程度に口の端を持ち上げた。
「菫子?」
「何でもないわ」
「何でもないんか? 」
涼は菫子の唐突な行動の意味を確かめようとしている。
よほど虚を突かれたものだったのだろう。
単なる友だちに向けてのキス。
ささやかな贈り物に過ぎないのだ。
相手の反応なんてどうでもよくて、何も思われないほうがよいのだ。
「友情の証よ」
「傑作(けっさく)やな」
涼は楽しげに笑っていた。
「嬉しいでしょ」
「返した方がええか」
とんでもなかった。
お返しなんて望まない。
聞いてくれずにされてたら、これから顔を合わせるのに困った所だった。
自分がするのと相手にされるのとでは微妙にニュアンスが違う。
「気持ちをありがたくもらっておくわね」
にっと笑ったら、涼も笑い返した。
それから、菫子はぱたぱたと走ってその場を去った。
(ごめんね。私は嘘つきなの。
ていのいい口実が欲しかったの)
友情だと気持ちをすり替えていれば、自分が楽だから。
嫌いになんてなれない。友達として好きなだけじゃない。
自分の気持ちさえ見誤らなければいい。
ずるい女になっているとしても。
菫子は、涙を流すまいと笑顔で校門を潜り抜けた。