Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

1、この静かなる夜に(2/☆)

 それから一年がすぎた。
 二人にとって何度目かのクリスマスイヴ。
 街はイルミネーションに彩られて賑やかだ。
 クリスマスプレゼントの手袋と、前日に焼いたケーキの箱、買いもの袋を手に彼の部屋を訪ねた。
 本当はセーターとか贈ってみたかったけど、
私は筋金入りの不器用なので手袋が精一杯だったのだ。
 色はダークブルー。
 涼ちゃんに似合う夜の空の色だ。
 預かった合鍵で、部屋の扉を開ける。
 部屋の主がいない部屋は、いつもより広く感じる。
 寂しくなりそうな心を何とか抑え込み、キッチンに立つ。
 ケーキの箱をテーブルの上に置き、買い物袋を広げる。
 買ってきた鶏肉、パンを取り出してそれぞれ封を開ける。
 唐揚とサンドウィッチって、ベタといえばベタかな。
 でも二人きりのささやかなクリスマスだもの。
 本当は悔しいけど彼の方が料理は上手い。
 料理以外でも何でも器用にこなしてしまうから内心悔しかったりする。
 いつかも器用貧乏なんじゃないの? と言う私に苦笑いしていた。
 落ち込みやすい私はいつも陽気な彼にかなり救われている。
 弱いところは私が気づいてあげられたらと思う。
 私の事なんて全部お見通し。
 きっと彼には一生頭なんて上がらないんだろう。
 先に好きになったのは私だもの。
「考え事をしてる場合じゃなかったわ。
 早くしなきゃ涼ちゃんが帰ってきちゃう」
 内心、焦りを感じて料理を開始した。
 冷蔵庫からレタスとハムとツナを取り出し、
  ゆで卵を固ゆでして、レタスと一緒に挟む。
 ハムとレタス、ツナとレタスのサンドウィッチも作り、皿に盛り合わせた。
 (次はお肉のしたごしらえをしなければ)
 からあげ粉を入れたバットにお肉をくぐらせる。
 あとは油で揚げるだけ。
 衣が揚がる音を聞きながら、お皿を用意した。
 ガチャ。扉の開く音が玄関口でする。
「グッドタイミング?」
「涼ちゃん、お帰りなさい」
「ただいま、菫子」
 大学時代に提案された同棲生活は送っていない。
 お互いの部屋を行き来するのが、自分たちらしいと思えたからだ。
「んま。やっぱ菫子の料理は最高やな」
 彼は私が菜ばしでバットに上げたから揚げを手で摘み、口に放り込んでいる。
「お行儀が悪いわよ」
「あんまり美味そうな匂いしとったから」
「部屋の外まで匂い届いてた?」
「バッチリ」
 笑う涼ちゃんの隣で私も笑う。
 テーブルにつくと、ケーキの箱を隅に避けた。
「お疲れ様、涼ちゃん」
「菫子もお疲れ様」
 仕事を終えて帰りに寄ったスーパーで買い物をして、
 主より先に部屋に入って料理を作った。
 涼ちゃんが買ってきたシャンパンを取り出し、瓶を開ける。
 シュワシュワの泡が吹き出す。
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