Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

1、この静かなる夜に(☆/3)

グラスに注いでカチンと互いに合わせた。
 料理はあっという間に空になっていた。
 シャンパンももう一度グラスに注いだ。
 空になった瓶もこうしてみると綺麗だ。
 彼はケーキを取り出してキャンドルを立ててゆく。
 電気を消してケーキの上のキャンドルに灯をともす。
 暗闇の中に仄かな光が滲んだ。
 大きな口をあけてケーキを頬張る彼を見つめる。
「美味しい?」
「さっきは聞かんかったのに」
「だってケーキが今日のメインだもの」
「美味いに決まっとるやろ」
「良かった」
 ほっと安堵の息をつく。
「まさか毒味させたんか?
うっわ。さり気なくひどい女やな」
 勿論、本気ではない。
 証拠に顔が笑っている。
「失礼な」
 笑って彼に反論した。
 ケーキをフォークで口に運ぶ。
 甘酸っぱい苺の味が口いっぱいに広がった。
 拘るつもりはなかったイヴだけど、こんなに素敵な日になった。
 ケーキを食べ終えても微笑みはずっと消えることがなかった。
「綺麗やな」
 ぽっと頬が染まる。
「キャンドルの炎が、揺らいでそう見えるだけだって」
 気恥ずかしくて茶化してしまう。
 本当は嬉しくて仕方ないのに。
「ほんま、綺麗や。名前の通り菫のように」
「菫って目立たん隅っこに咲いてるやろ。
 俺も一度は通り過ぎてしまった」
「……涼ちゃん」
「俺をずっと好きでいてくれてありがとう。
 友達としか思ってなかったお前が、
 気づいたら俺の中で信じられないほど
 大きな存在になってい驚いて。
 色々あって今度は俺からも告白したわけやけど、
 受け入れてもらえんかったらどうしようかと思った」
 恋人になるための手段を強行した。
「改まってどうしたの?」
「一年前も指輪が渡せないとか、ふざけたこと抜かしてごめんな。
 最近、付き合い始めた恋人同士じゃあらへんのに」
「涼ちゃんは誠実な人だから簡単に言えないんだよね。
 果たすつもりの約束がもし駄目になったら、自分をひどく責めるでしょう?」
「菫子の言う通りや」
「そないに自信ないない言う自分にむちゃくちゃ腹が立った。
 この前かて色々寝る前に考えてた。
 なんで本気で好きな女に幸せにするって
 一言が言えないんだって自問自答した」
 彼は真剣な表情になった。
「お前を幸せに出来なかった場合の償いが俺に出来るか。
 何度もそればかりにいき着いとったんやけど……」
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