バンパイア君は私に甘々でメロメロ
「送っていきます」

黒川がそう言うと、すみれは慌てた。

「えっ、いいよ!ひとりで帰れるし!」

「ダメです。さっきから顔、赤いままだし。ふらふらしてるし」

「してない!!」

「してます」

黒川はきっぱり言い切ると、すみれの肩をやんわりと抱いて歩き出した。

結局、そのまま黒川のペースに流され――すみれは自分のマンション前まで送られてしまった。

「……ありがと」

玄関前で小さく礼を言うと、黒川はにこりと笑った。

「どういたしまして」

そして、ふとすみれを見下ろすように目を細める。

「――にしても、先輩の家、けっこう駅から遠いですね」

「え……」

すみれの目が、丸くなる。

「ね、なんで黒川くん……私の家、知ってるの?」

黒川は一瞬、口を閉ざしたあと、すぐにいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「さぁ?なんででしょうね」

「……ごまかさないで!」

「じゃ、また明日。おやすみなさい、先輩」

黒川は軽く手を振ると、すみれが詰め寄るより早く、ひらりと背を向けて歩き去ってしまった。

「ちょ、ちょっと黒川君!!」

夜風がすみれの髪を揺らす。
頬の熱がまだ引かないまま、心臓がどきどきと速く打っていた。

(……なんなのよ、ほんとに……)

けれど心の奥では、黒川の甘い声とぬるい舌の感触が、ずっと消えてくれなかった。
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