バンパイア君は私に甘々でメロメロ

6

翌朝。

(……眠れなかった)

枕に顔を埋めながら、すみれは軽くため息をついた。
膝のかすり傷は、もう痛くない。けど――
黒川がそこに口づけた感触が、皮膚の奥に残っている気がした。

(ていうか、なんであんなに自然に舐めてきて……キスまでしようとして……)

布団の中でじたばたと暴れたあと、ようやく気持ちを無理やり整えて出社。

でも。

職場のデスクにつくなり、やってきた黒川の顔を見て――

すみれの心拍数はあっさりと振り出しに戻った。


「おはようございます、先輩」

「……お、おはよう」

昨日と変わらぬ涼しい笑顔。
まるで、夜にあんな甘いことがあったなんて嘘みたい。

気まずそうに顔を背けるすみれに、黒川はクスッと笑った。

「……顔、赤いですよ?昨日、何かありました?」

「あったでしょ!!」

思わず声が大きくなり、他の社員がちらっと振り向く。
すみれは真っ赤になって椅子に座り直し、机の書類を勢いよくめくる。

黒川はそんな様子を楽しそうに見ていた。

「……先輩」

こっそり小声で耳元に寄ってくる。

「次、キスは拒否しないでくださいね」

ペンを握る手に力が入る。

「仕事に集中して!」

「はいはい」

黒川は素直に頷きながら、満足げに椅子に戻る。
でもその横顔には、次の“仕掛け”を企んでいる気配が、確かに見えた。

(……このままじゃ、また振り回される……)


すみれは頭を抱えながらも、胸のどきどきを押さえることができなかった。
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