「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
第1章 殺すには惜しい男
この国が戦火の火種をまいた時、その相手は隣国の小国だった。
そして、自国を守ろうと立ち上がった王がいる。まだ二十八歳のゼイン・ラグナリア王。
黒髪のその王は、どこか無骨で、静かに怒りを燃やしているような気配を纏っていた。
ラグナリアは小さな国で、兵も少ないと侮られていた。
だがゼイン王が自ら最前線に立ち、我がアルディナの軍を押し返していると聞いたとき、私は胸の奥に、ほんのかすかな不安を覚えた。
もしかして、負けるかもしれない。
そう思ったのは初めてだった。
けれど我が国には、熟練の兵が揃っている。戦場の空気を読む指揮官も多い。
「戦いの勝者は、時期に決まるだろう」
父王のその言葉には、たしかに揺るぎない自信が滲んでいた。
私はそれを信じるしかなかった――あの時までは。
「国王!我が軍が、ラグナリアの兵に押されています!」
玉座の間に駆け込んだ伝令の兵士の声が、空気を裂いた。
そして、自国を守ろうと立ち上がった王がいる。まだ二十八歳のゼイン・ラグナリア王。
黒髪のその王は、どこか無骨で、静かに怒りを燃やしているような気配を纏っていた。
ラグナリアは小さな国で、兵も少ないと侮られていた。
だがゼイン王が自ら最前線に立ち、我がアルディナの軍を押し返していると聞いたとき、私は胸の奥に、ほんのかすかな不安を覚えた。
もしかして、負けるかもしれない。
そう思ったのは初めてだった。
けれど我が国には、熟練の兵が揃っている。戦場の空気を読む指揮官も多い。
「戦いの勝者は、時期に決まるだろう」
父王のその言葉には、たしかに揺るぎない自信が滲んでいた。
私はそれを信じるしかなかった――あの時までは。
「国王!我が軍が、ラグナリアの兵に押されています!」
玉座の間に駆け込んだ伝令の兵士の声が、空気を裂いた。
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