「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
目を見開き、彼女はゼインと、そして私を交互に見つめた。

その美しい顔に、はっきりとした混乱の色が浮かぶ。

周囲の者たちも騒めき始める。

「敵国の王が、王太子に……?」「そんな馬鹿な……」

ゼインは、まるでその全てを聞いていないようだった。

ただ、シシリアの顔を、じっと、見つめていた。

その目に宿るのは、憎しみでも怒りでもない。

――絶望。

私は、思わず彼に声をかけたくなった。

「ゼイン……」

けれど、その一言すら、喉を越えなかった。

だって私は、そのゼインの妻になる女。

――けれど、ゼインの心には、まだ別の女がいる。

その現実が、私の体を冷たく凍らせていくのだった。

そしてゼインは、床に両ひざを着くと、大きく右拳で床を叩いた。

鈍い音とともに拳が砕け、赤い血が石床に滲む。

「俺は……愛する女一人、守れなかったのか……」

その声は、深い絶望に震えていた。
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