「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
「殺させはしない。あなたはこの国の王になるのだから。」

私はそう言って、そっとゼインの肩に手を添えた。

その肩は驚くほど痩せていて、張りつめた緊張が皮膚の奥から伝わってくる。

ほのかに香る石鹸の匂いは、彼が私たちの風呂に慣れ始めた証でもあった。

そしてそれは、どこか儚くて──悲しかった。

「……王って何だ。」

ゼインの低い声に、私は思わず息をのんだ。

「……誰もが認める、国の威厳であり、誇りよ。」

その言葉が本当に正しいのか、自分でもわからない。

でも、そう言わなければ彼が崩れてしまいそうだった。

ゼインは私の腕を掴んだ。

その指は熱を持って、かすかに震えていた。

「俺は……そうじゃなかった。」

私はすぐに首を振った。

「いいえ。誰もあなたを責めなかったじゃない。」

だって、彼は命を懸けて、祖国を守ろうとした。

それだけで、十分すぎるほど誇りだったはずだ。
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