「おまえほどの男、殺すには惜しい」と父に言われた敵国の王子の妻になりました
けれど──

「責められた方が、よほどましだった。」

その一言に、私は言葉を失った。

その声には、自分を罰するような痛みと、無力さへの怒りが滲んでいた。

「誰も何も言わない。だから余計に……俺は……何を失ったのかすら、わからなくなる。」

そう呟くゼインの目には、涙が溜まっていた。

でも、それは一滴もこぼれなかった。

私は黙って彼を抱きしめた。

心臓が痛くなるほど強く。

「戦場で自決すればよかった。」

その一言に、私は彼の肩を掴んで強く引き離した。

――パチン。

静寂を裂く音が、部屋に響いた。

「……そんな事、例えでも言ったらいけないわ。」

私はゼインの頬を叩いた。手のひらが熱い。

だけど、それ以上に心が燃えるように痛かった。

それでも彼は、私を見ようとしなかった。

目を逸らし、ただ俯いたまま、影のように座っている。

私は踵を返し、棚の奥から銀の短剣を取り出した。
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