Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
しばらくは電話だけで、会う約束をしないまま月日が過ぎる。

『小夜、いい加減会ってくれ。頼むから』

想はなりふり構わずといった様子で、小夜に電話で懇願した。

「だめだよ。今、週刊誌に記事が書かれたりするのだけは、絶対にだめ」
『なんでだよ! ヘビの生殺しか? 小夜は俺のフィアンセだぞ。デートしてなにが悪い』
「もう少しだけ様子を見させて。ね? お願い、想」

すると電話口の向こうで想が言葉を詰まらせる。

『ずるいぞ。そんなに可愛くお願いされたら、断れないだろ』
「ほんと? ありがと、想」
『あー、だめだ。やっぱりだめ。今すぐ会いたくなった』
「ええ? もう、どっちなの?」

止まらないやり取りに、想と一緒にいたらしい本田が横から提案した。

『俺が想の格好してマスコミを引きつけるから、想はそのあと小夜ちゃんのところへ行けばいい。小夜ちゃん、想と会える場所を考えてやって』

言われて小夜は考えを巡らせる。
そして週末にホテルのバーで小夜が演奏したあと、客室で落ち合うことになった。

「私がチェックインして、ルームキーをマスターに預けておくから。想は先に部屋で待ってて」

想の素性に気づきながら他言する様子もないマスターなら、安心してお願いできる。
早速その週末、本田とバーのマスターに協力を仰いだ。
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