Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
ブルームーンのもとで
土曜日になり、想はレコーディングスタジオでその日の仕事を終えると、本田に私服を手渡す。
着替えた本田に、更に車と自宅マンションのキーを差し出した。
「オッケー。あとは任せておけ」
そう言って、帽子を目深にかぶり、サングラスとマスクをつけた本田は部屋を出て行く。
しばらくすると、メッセージが届いた。
【マスコミ、上手く誘導できた。俺のあとをつけてくる。今なら大丈夫だ】
ありがとうございますと返信してから、想はタクシーを呼んで乗り込んだ。
小夜の演奏するホテルへと向かう。
時計を見ると、ちょうどあと十分で小夜の本番が始まるところだった。
ホテルのエントランスでタクシーを降りると、そのままエレベーターに乗ってバーへ行き、マスターに目礼する。
マスターは小さく頷くと、以前と同じように客席の死角になるカウンターの隅に想を促した。
「これを」
そう言ってルームキーをさり気なく手渡してくれる。
「ありがとうございます、マスター」
その時客席から拍手が起こり、想は顔を上げた。
ブルーのイブニングドレスに身を包んだ小夜が、微笑みながらステージへと歩いて行く。
久しぶりに見る小夜の姿に、想の胸はドキドキと高鳴った。
今すぐ駆け寄って抱きしめたくなる衝動に駆られつつ、ステージに注目する。
小夜は一礼するとピアノの前に座り、早速演奏を始めた。
チャールズ・チャップリンの『Smile』
目を伏せて微笑みを浮かべながらピアノを弾く小夜の横顔は美しく、想は言葉もなくじっと見つめる。
ゆったりとした心地よい調べに、馴染みの男性客たちもうっとりと酔いしれていた。
想は改めて小夜に恋をし直したように、ひたすら小夜の姿に見惚れ、音楽に心癒やされていた。
着替えた本田に、更に車と自宅マンションのキーを差し出した。
「オッケー。あとは任せておけ」
そう言って、帽子を目深にかぶり、サングラスとマスクをつけた本田は部屋を出て行く。
しばらくすると、メッセージが届いた。
【マスコミ、上手く誘導できた。俺のあとをつけてくる。今なら大丈夫だ】
ありがとうございますと返信してから、想はタクシーを呼んで乗り込んだ。
小夜の演奏するホテルへと向かう。
時計を見ると、ちょうどあと十分で小夜の本番が始まるところだった。
ホテルのエントランスでタクシーを降りると、そのままエレベーターに乗ってバーへ行き、マスターに目礼する。
マスターは小さく頷くと、以前と同じように客席の死角になるカウンターの隅に想を促した。
「これを」
そう言ってルームキーをさり気なく手渡してくれる。
「ありがとうございます、マスター」
その時客席から拍手が起こり、想は顔を上げた。
ブルーのイブニングドレスに身を包んだ小夜が、微笑みながらステージへと歩いて行く。
久しぶりに見る小夜の姿に、想の胸はドキドキと高鳴った。
今すぐ駆け寄って抱きしめたくなる衝動に駆られつつ、ステージに注目する。
小夜は一礼するとピアノの前に座り、早速演奏を始めた。
チャールズ・チャップリンの『Smile』
目を伏せて微笑みを浮かべながらピアノを弾く小夜の横顔は美しく、想は言葉もなくじっと見つめる。
ゆったりとした心地よい調べに、馴染みの男性客たちもうっとりと酔いしれていた。
想は改めて小夜に恋をし直したように、ひたすら小夜の姿に見惚れ、音楽に心癒やされていた。