Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
「小夜、ごめん。抑えが効かなかった」

二人で素肌を合わせたまま息を整え、ようやく気持ちが落ち着くと、想は優しく小夜の髪をなでながら瞳を覗き込む。

「怖がらせたか?」
「ううん、大丈夫。想、ずっと会いたかった」

想は切なげにキュッと眉根を寄せた。

「俺もだよ。会いたくて会いたくて、やっと会えたのに小夜はステージでピアノを弾いていて……。手を伸ばせば届きそうなのに触れられなくて、心が焦らされた。だからようやく俺のところに来てくれた小夜を前に、理性が吹き飛んだ」

そう言って想は目を潤ませる。

「改めて小夜に恋をした。ピアノを弾く小夜の美しさに見惚れて、たまらなく胸が締めつけられた。小夜が今、俺の腕の中にいてくれて、心から嬉しい」

小夜は幸せそうに想に微笑んだ。

「私も。想の腕の温もりが愛おしくて、こうやって抱きしめてもらえると心から安心する。想、あなたのことが大好き。すっと一緒にいてね」
「じゃあ……」

想は期待を込めて半身を起こす。

「もう結婚してもいいか?」
「それはだめ」
「なんでだよ!?」

ガックリと肩を落とし、想は再びベッドに倒れ込んだ。

「俺は小夜とずっと一緒にいたいのに」
「それは私もよ、想。だけどあなたはたくさんのファンにとって憧れであり、恋人なの。私はあなたに、これからもずっと愛されるアーティストでいてほしいから」
「小夜を幸せにできないのに?」
「ううん。ちゃんと私は想に幸せにしてもらってる。今もこうやって」
「でも会えなければ、抱きしめることもできない」
「それなら、これからもこうやって時々会ってくれる?」

想はまたパッと起き上がった。

「もちろん。明日も明後日も、その次も」
「それはさすがに多すぎます。じゃあ、また週末に会える?」
「ああ、いつでも会う。小夜のいるところなら、どこへでも駆けつけるから」
「ふふっ、いつものこの部屋だけど、いい?」
「小夜がいるなら、それだけでいい」
「うん。ありがとう、想」

小夜はにっこり笑うと、チュッと可愛らしく想にキスをする。
不意を突かれて真っ赤になった想は、思わず片手で口元を覆った。

「……小夜、ちょ、あの、可愛い過ぎるぞ」
「あはは! 想も可愛いよ」
「なんだと?」

ガバッと想は小夜に覆いかぶさる。
吐息が触れそうな距離で見つめ合うと、互いの表情から笑みが消えた。

「小夜、心から愛してる」
「私も、想のことが大好き」

込み上げる切なさを胸に、二人はまた愛を伝えるキスを交わした。
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