Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
年末年始の休暇。
二人は初めて旅行に出かけた。

いつものように変装した本田がマスコミを引きつけている間に、想は別の車で小夜と高速道路に乗った。

向かったのは伊豆にある隠れ家のような宿。
一棟ずつ独立していて、部屋に露天風呂もついている。
ゆっくり庭を散歩したり、部屋でくつろいだり、気ままにお風呂に入ったりと、二人きりの時間を楽しんだ。

「小夜、お願いがある」

最後の夜、ベッドの中で小夜を優しく抱きしめながら想が切り出した。

「なあに?」
「次のブルームーンの夜、俺と結婚してほしい」

え?と小夜は顔を上げて想を見つめる。

「次の、ブルームーンの夜?」
「ああ。俺たちはブルームーンに導かれるように惹かれ合った。結ばれるのも、ブルームーンの夜にしたい」
「わあ、素敵!」

小夜が目を輝かせると、想も嬉しそうに微笑んだ。

「それでいいか?」
「うん。もうそれしか考えられない」
「よかった。じゃあそうしよう」
「はい」

満面の笑みで頷いてから、小夜はふと真顔に戻る。

「それで、次のブルームーンっていつなの?」
「この間が一年七か月前だから、そろそろじゃないかな」

そう言うと想は半身を起こし、ベッドサイドに置いたスマートフォンを手に取った。
検索する様子を小夜が見守っていると、想は驚いたように目を見開いたあと、ガクッとうなだれる。

「ん? どうかしたの? 想」
「……あと二、三ヶ月後かと思ってたのに」
「いつだったの?」
「……来年の、大みそか」
「え? それって、一年後ってこと?」

コクリと小さく頷くと、想は盛大なため息をついた。

「どうしよう、そんなに待てない」
「でも想が言い出したんでしょ? それに、ほら。ブルームーンの夜に結婚するのが私たちの運命だと思わない?」
「そうだけど……。知ってたら提案しなかった」
「ええ、どうして? 私は教えてもらってよかった。だってとっても素敵だもん。楽しみだね、次のブルームーン」

笑顔を向けると、想はようやく頬を緩める。

「小夜がこんなに喜んでくれるなら、叶えないとな」
「うん。叶えてね、私の夢」
「わかった。けど、それまでずっと小夜は俺のものだからな。逃げるなよ?」
「逃げないよ。怖い顔で追いかけて来そうだもん、想」
「絶対に捕まえてやる。って、鬼ごっこみたいに言うな」
「あはは!」

ひとしきり笑ってから、また見つめ合う。

「想。ブルームーンの夜に、私を想のお嫁さんにしてね」
「わかった。必ず小夜をもらう」
「うん」

そっと交わすキスは、二人の約束の証。
心待ちにしよう、二人のその日を。
導いてくれたブルームーンのもとで、二人の愛を確かなものにしよう。

(それが私たちの運命だから)

想の腕の中で、小夜はそう思った。
< 120 / 123 >

この作品をシェア

pagetop