Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
◇
「うーん……」
二週間後にようやく入荷してきた想のピアノ楽譜本を手に、小夜は難しい顔で考え込んでいた。
「どうかしたの? 小夜」
店長に声をかけられてハッとする。
「あ、いえ。なんでもありません。すぐに陳列しますね」
「うん、お願い。また飛ぶように売れるわよー」
嬉しそうな店長に小夜も笑顔を返してから、本を持てるだけ抱えてポップスの棚に向かう。
一番目立つところに平積みし、数冊棚に並べた。
「これでよしっと」
そしてもう一度考え込む。
(どうしよう、買いたい。でもだめ。忘れなきゃ)
さっきからその堂々巡りをしていた。
あの想が作曲したなら、どれも素敵な曲に違いない。
先日軽く弾いてみた二曲も、メロディラインが綺麗な曲だった。
それに彼はシンガーソングライターだという。
バーではピアノ演奏だけだったが、歌も歌えるのだ。
(話す声もいい声だったもんなあ。低くて艶っぽくてよく響いて。あの声で歌ったら、きっと……。いやいや、だからだめだって)
うっとりしては、真顔に戻って首を振る。
その繰り返しに、店長は怪訝そうに小夜に尋ねた。
「ねえ、どうかしたの? 小夜。そんなに想が気になるなら、曲を聴いてみたら?」
「いえ、それはやっちゃいけないことなので」
「は? どういうこと?」
「私だけのマイルールなんです。気にしないでください」
その時、若い女性客が「So Cool 入荷しましたかー?」と聞いてきた。
「はい、ございますよ。こちらです」
「あった! よかったー」
嬉しそうに胸に抱える女性に微笑んで、小夜はレジへと案内した。
「うーん……」
二週間後にようやく入荷してきた想のピアノ楽譜本を手に、小夜は難しい顔で考え込んでいた。
「どうかしたの? 小夜」
店長に声をかけられてハッとする。
「あ、いえ。なんでもありません。すぐに陳列しますね」
「うん、お願い。また飛ぶように売れるわよー」
嬉しそうな店長に小夜も笑顔を返してから、本を持てるだけ抱えてポップスの棚に向かう。
一番目立つところに平積みし、数冊棚に並べた。
「これでよしっと」
そしてもう一度考え込む。
(どうしよう、買いたい。でもだめ。忘れなきゃ)
さっきからその堂々巡りをしていた。
あの想が作曲したなら、どれも素敵な曲に違いない。
先日軽く弾いてみた二曲も、メロディラインが綺麗な曲だった。
それに彼はシンガーソングライターだという。
バーではピアノ演奏だけだったが、歌も歌えるのだ。
(話す声もいい声だったもんなあ。低くて艶っぽくてよく響いて。あの声で歌ったら、きっと……。いやいや、だからだめだって)
うっとりしては、真顔に戻って首を振る。
その繰り返しに、店長は怪訝そうに小夜に尋ねた。
「ねえ、どうかしたの? 小夜。そんなに想が気になるなら、曲を聴いてみたら?」
「いえ、それはやっちゃいけないことなので」
「は? どういうこと?」
「私だけのマイルールなんです。気にしないでください」
その時、若い女性客が「So Cool 入荷しましたかー?」と聞いてきた。
「はい、ございますよ。こちらです」
「あった! よかったー」
嬉しそうに胸に抱える女性に微笑んで、小夜はレジへと案内した。