Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
光との時間
「マスター、こんばんは」
次の土曜日。
小夜は光を連れていつものバーに演奏に来ていた。
「こんばんは、藤原さん。おや、お隣の方はお友だち?」
「彼氏っす」
軽口を叩く光をぺしっと手であしらってから、小夜はマスターに説明する。
「私の職場に新しく入って来たんです。アメリカでジャズピアノを習って帰国したばかりで。今夜は観客として聴きに行きたいと言うので連れて来ました」
「へえ、ジャズピアニストなんだ。せっかくだから彼にも弾いてもらいたいな」
すると光は意外にも躊躇した。
「いや、それが……。多分俺が弾いたらびっくりさせちゃうと思うんですよね。こんな高級なバーの雰囲気、ぶち壊しそうで」
「でも、君もピアノ演奏の仕事をしたいんじゃないのかい?」
「はい、いずれは。だから今日は小夜の演奏を聴いて、勉強させてもらおうと思って」
「なるほど。それならカウンターの席にどうぞ。ここは音が一番よく響く特等席なんだ。お酒はなにがいい?」
「んーと、ウイスキーをロックで」
「かしこまりました」
マスターの前の席に腰を下ろした光に、小夜は声をかける。
「じゃあ私、控え室に行くね」
「ああ。演奏楽しみにしてる」
「うっ、プレッシャーかけないで。マスター、彼をべろんべろんに酔っ払わせてください」
「残念。俺、アルコールにはめっぽう強いんだ。女には酔うけどね」
「もう、バカなことばっかり」
苦笑いしてから、あとでねと手を振って、小夜は控え室に向かった。
次の土曜日。
小夜は光を連れていつものバーに演奏に来ていた。
「こんばんは、藤原さん。おや、お隣の方はお友だち?」
「彼氏っす」
軽口を叩く光をぺしっと手であしらってから、小夜はマスターに説明する。
「私の職場に新しく入って来たんです。アメリカでジャズピアノを習って帰国したばかりで。今夜は観客として聴きに行きたいと言うので連れて来ました」
「へえ、ジャズピアニストなんだ。せっかくだから彼にも弾いてもらいたいな」
すると光は意外にも躊躇した。
「いや、それが……。多分俺が弾いたらびっくりさせちゃうと思うんですよね。こんな高級なバーの雰囲気、ぶち壊しそうで」
「でも、君もピアノ演奏の仕事をしたいんじゃないのかい?」
「はい、いずれは。だから今日は小夜の演奏を聴いて、勉強させてもらおうと思って」
「なるほど。それならカウンターの席にどうぞ。ここは音が一番よく響く特等席なんだ。お酒はなにがいい?」
「んーと、ウイスキーをロックで」
「かしこまりました」
マスターの前の席に腰を下ろした光に、小夜は声をかける。
「じゃあ私、控え室に行くね」
「ああ。演奏楽しみにしてる」
「うっ、プレッシャーかけないで。マスター、彼をべろんべろんに酔っ払わせてください」
「残念。俺、アルコールにはめっぽう強いんだ。女には酔うけどね」
「もう、バカなことばっかり」
苦笑いしてから、あとでねと手を振って、小夜は控え室に向かった。