Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
「おお、小夜! なんか思ってたんと違ったけど、めっちゃ楽しかった!」

光の第一声に、小夜はガクッと肩を落とす。

「なによ、それ。小バカにしてる?」
「違うって。想像の斜め上行ってて新鮮! こんな楽しみ方あるんだーって」
「ええ? 光くん、いつも人前でどうやって弾いてるの?」
「オラオラー、お前らついて来いよって感じ。行けんのか? 行けんだろ! って煽って」
「ガラ悪っ」
「うん。俺、絶対このバーでは弾けない」
「でしょうね」

二人のやり取りに苦笑いしながら、マスターが小夜にカウンター席を勧めた。

「今夜は藤原さんもここで飲んだら?」
「はい、ではお邪魔します」

ドレスを着たまま光の隣に座ると、次々とお客様が声をかけに来た。

「小夜ちゃん、今夜の演奏もよかったよ」
「いっつもすぐに控え室に入っちゃうから、感想が言えなくてさ」
「そうそう。週末にここでお酒飲みながらピアノ聴く時間を、楽しみにしてるよ」

そんなふうに思ってくれていたとは、と小夜は感激してお礼を言う。

「皆さんに喜んでいただけるように、レパートリーを増やして練習しておきますね」
「今でも充分だよ。でも楽しみにしてる」
「はい、ありがとうございます」

ひとしきり話してから、ようやく小夜はマスターが振る舞ってくれたオードブルとカクテルを味わった。
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