Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
コンサートの最後は、アンコールに応えて再び光も登場する。

『All I Want for Christmas Is You』を二人で明るくゴージャスに弾き、観客も手拍子で盛り上がった。

「とっても楽しかったです!」

笑顔で帰っていくカップルたちをカウンターの横で見送っていると、口々に感想を伝えてくれる。
晴れ晴れとした表情で、仲良く腕を組んで店をあとにするカップルに、小夜も嬉しくなった。

「小夜ちゃん、今夜はまたひと味もふた味も違った演奏で、素晴らしかったよ」

最後に、カウンター席にいた馴染みの男性客たちが近づいてきた。

「カップルに紛れて聴きに来てよかった」
「これからも楽しみにしてるよ」

ありがとうございますと笑顔で答えていた小夜は、『ANGEL』をリクエストしてくれた男性客とふと目が合った。
小夜の顔から笑顔が消える。

「小夜、どうかした?」

隣の光が心配そうに顔を覗き込む。
小夜はうつむいてじっと考えてから顔を上げ、カウンターにいたマスターに尋ねた。

「マスター。あと一曲だけ弾かせてもらえませんか?」
「え? それはいいけど」
「ありがとうございます」

どうしたのかと言わんばかりの皆の視線を受け、小夜は頭を下げる。

「皆様、よかったらもう一曲だけおつき合いいただけませんか?」

そう言うと、顔を見合わせる皆に背を向けて、小夜はピアノに向かった。
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