Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
バレンタインコンサート
元旦と二日も、小夜は想のマンションで一緒に過ごした。
作って来たおせち料理を食べ、ピアノを弾き、ソファでおしゃべりをしてまたピアノを弾く。
贅沢に気ままに時間を過ごし、三日の朝に仕事に向かう想に最寄駅まで車で送ってもらった。

「じゃあな、小夜。実家でゆっくりしてきて」
「うん。お仕事がんばってね、想」
「ああ。また連絡する」

駅から少し離れた路地裏で、小夜は想の車を降りた。
見えなくなるまで見送ると、駅へと歩き出す。
電車を乗り継いで千葉の実家に帰り、久しぶりに家族揃って新年を祝った。

仕事始めの六日に、実家からそのまま勤務先の楽器店に出勤する。

「明けましておめでとうございます」

皆で挨拶しながら、久しぶりの再会を喜んだ。

「小夜、あけおめ」

光もいつものように声をかけてくる。

「明けましておめでとう、光くん。今年もよろしくね」
「ああ、こちらこそ」

年末はどこかぎこちない雰囲気のまま別れたが、時間が経って落ち着いた気がした。
それでも、いずれは光にきちんと話をしよう。
悩みを聞いて、心配してくれていたのだから。
小夜はそう思いながら、戻って来た日常をいつものように過ごしていた。
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