砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
しばらくして、裏庭で洗濯をしていると、近くの水桶から、くすくすと笑い声が聞こえてきた。

「王はここ一年、誰とも閨を共にしていないそうよ。」

「正妃様が亡くなって、腑抜けになったのかねぇ。」

「なに、ハーレムに行かないだけで、本当は誰か部屋に招いてるんじゃないの?」

石鹸の泡を飛ばしながら、侍女たちは好き勝手なことを言って笑っている。

その声が、なぜか胸に小さく刺さった。

私は、泡のついた布を水に浸しながら、静かに耳を澄ませる。

「ナディアは、どう思う?」

一人が、振り返って私に声をかけた。

驚いたが、私は笑った。

でも、それはほんの少し寂しげな微笑みだった。

「……不器用なだけなんじゃない?」

そう答えると、侍女たちは一瞬ぽかんとし、それからまた笑い出した。
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