砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
「なにそれ、詩人みたいな言い方!」

「不器用な王様? まさか、あの完璧なカリーム王が?」

私はそれ以上何も言わず、手元の布をゆっくりと絞った。

泡が消えていく様子を見つめながら、胸の奥でそっと呟く。

──そう。

あの方は、ただ不器用なだけ。

きっと、自分の悲しみにも、他人の優しさにも、どう向き合えばいいのか分からない。

だから閉じたままでいるのだと、私は思う。

本当は、誰よりも愛に飢えているのに。


たたみ終えた洗濯物を胸に抱えて、お妃様方の部屋へ向かう。

陽射しにさらされた衣の温もりが、腕にじんわりと染み込む。

私のような下働きが立ち入るのは、ほんの一角だけ。

それでも、あの方たちの声は嫌でも耳に届いてくる。

「今度の正妃は、ザヒーラ様かしら。」

声の主は、若い側女。
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