砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
私は足を止め、ユリーナ様の遺品の部屋に入った。

確かに、ここにはまだ微かに香りが残っている。

カリーム王の言う通り、毎日ここで過ごすうちに、私の肌や髪に香りが移ってしまったのだろう。

胸が痛む。

もう一年も経つというのに、あの方は、あの人の匂いを――まだ覚えているなんて。

「……っ」

込み上げるものを抑えきれず、私はそっと膝をついた。

ユリーナ様……お許しください。

私は、ただ王を慰めたかっただけなのに。

それなのに、あの一言が、嬉しかった自分が――悔しい。

「カリーム王……私が、癒して差し上げたい。」

小さくそう呟いて、私は棚の奥に手を伸ばした。

そこにあるのは、残り僅かな香水――ユリーナ様が愛用されていたもの。

王は、あの香りに反応した。

ならば、これを纏えば……少しでも、あの方の心を慰められるかもしれない。
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