砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
その端正な顔に、わずかな笑みを浮かべて。

「……お姫様、ここで何をしていたのかな?」

冗談めいたその口調に、顔から火が出そうになる。

私は胸元の香りを、思わずぎゅっと押さえた。

「失礼しました。」

背を向け、逃げるように歩き出そうとしたその瞬間。

「……ユリーナの香り。」

低く呟かれたその言葉に、私は足を止めた。

振り向く間もなく、執事が声を荒げる。

「おまえ、勝手にユリーナ様の遺品を!」

私の腕に手が伸びかけた――

だが、すぐに別の手がそれを止める。

「ナディア。」

カリーム王の手だった。

その瞳に怒りはなく、ただ……少しだけ、悲しみが浮かんでいた。

「……あれだけは、使わないでくれ。」

きっと、あの香水が最後の“ユリーナ”なのだろう。

それがなくなってしまえば、王は――もう、彼女を感じる術を失ってしまう。

「……はい。」

私は深くうなずき、胸元をそっと押さえた。
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