砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
王は静かに微笑んで、私の名を呼んだ。

「ナディア。」

「はい。」

「君に、ひとつ聞きたいことがあって。」

まさか――香水のこと⁉

私は思わず、先に口を開いてしまった。

「申し訳ございませんっ!」

深く頭を下げたその瞬間、王の静かな息遣いが、すぐ近くで聞こえた。

「謝らないで。理由を聞きたいだけだから。」

静かに、けれど深く響く声。

ああ……なんてお優しい方なのだろう。

本来なら、遺品を勝手に使うなど罰せられてもおかしくないのに。

私は拳を握りしめ、震える声で口を開いた。

「……カリーム王が、ユリーナ様の香りを思い出しておられるのを見て……」

想いが喉に詰まりそうになる。

まさか“あなたをお慕いしています”なんて、言えるはずもない。

「……あの香りをまとえば、少しでも、王を癒して差し上げられるのではと……」

声が細くなっていく。

これで許されなかったら、もう……終わりだ。

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