砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
私は静かに頭を下げた。

王の返事を待つ間、心臓の音がやたらとうるさかった。

「香水はね、つけ始めはそのまま香水の香りがするが……しばらくすると、その人の体温と混ざって、独自の匂いになるんだ。」

「……そうなんですか?」

私は素直に驚いた。

香水なんて、今まで一度もつけたことがなかったから。

王は静かに、遠くを見つめるように続ける。

「だから――ユリーナの匂いは、同じ香水を使っても、ユリーナにしか出せない香りだった。」

その言葉に、胸の奥がじくりと痛んだ。

ああ、やっぱり。

この方の心には、今も変わらずユリーナ様が生きている。

私は黙ってうなずいた。

何も言えないまま、ただ……王の横顔を見つめるしかなかった。

「……でも、癒された。」

その一言と共に、カリーム王が私をそっと抱き寄せた。

「久しぶりに、人の体温と混ざった匂いを嗅いだ。」
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