砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
驚きで動けない。

気づけば、私は王の腕の中にいた。

「いいもんだな……人の匂いって。」

そう言って、ぎゅっと私を強く抱きしめてくれる。

触れた肩、胸、そして耳元にかかる吐息――

ああ、鼓動がうるさい。

胸が破れそうなほど鳴ってる。

「……すごい心臓の音が鳴ってるな。」

「うわっ!」
思わず声を上げてしまった。

でも王は、優しく笑った。

「いいよ。誰かの心臓の音を聞くのは……嫌じゃない。」

私の音が、初めて誰かに届いた気がした。

しばらくのあいだ、私はカリーム王の腕の中にいた。

この体温に、触れていたかった。

けれど、ふいに背後から誰かの視線を感じて、私はぴくりと肩を震わせた。

「……あっ、人が……見ています。」

小さく囁いて、そっと王の腕から離れる。

「もう戻るか?」

優しい問いかけに、私はうなずいた。

「はい……」
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