砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
でもその手の温度は、驚くほど熱かった。

「……悪い。やっぱり……編んでもらえるか?」

ほんの少しだけ、躊躇うような声。

私は、胸の奥が熱くなるのを感じながら、小さくうなずいた。

「はい。」

ふたりで再び噴水の縁に戻る。

王はすっと背を向け、長い髪を胸の前に垂らされた。

まだ香油の香りがほんのりと残る、柔らかな黒髪。

そっと手を伸ばし、編み始める。

「……ユリーナが死んでから、編んでくれる人はいなくてね。」

静かに落とされた声。

それは、亡き妃の名を呼ぶだけで、王がどれだけ深い悲しみに沈んでいたのかを教えてくれた。

「お妃様なら、他にもいらっしゃいます。ハーレムに……」

少しだけ絞るように、私は言った。
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