AI生成でママにされた私は、シングルの年下クズ男子に再構築されています。
 てっきり天喜は、「バカじゃねーの?」と鼻で笑うと思っていた。「人工知能相手になに真剣に語っちゃってんの?」って。ドン引きすると思っていた。

 喜びで満たされる一方で、なんでよ、と。くすぐったいような不満がじわじわと胸に広がった。

 ……あんた、そんなキャラじゃないでしょ。なんでそんな、優しくするの?

 沈黙したままで、なにも言えずにいると、そばで天喜の気配が動いた。彼は静かに立ち上がり、戸口に向かって歩いていく。

「明日も仕事だろ、早く寝ろよ?」
「……うん」

 また仕事部屋に戻るんだ。

 そう思いつつ、彼の姿を視界に入れるけれど。目は合わなかった。

 宝瑠はスマホに触れ、さっきまで見ていたチャットアプリを開いた。

 書きかけだった文字を、指先でひとつずつ消していく。画面が空白になったあと、あらたに言葉を打ち込んだ。テルナに相談した。

『天喜の気持ちが気になるの。私のこと、どう思ってるんだろう……ただのママ役? 同居人? それとも……ただの女、って存在? ぐるぐる考えちゃうの』

 AIは即座に答えを導き出した。

 ——『それはね、宝瑠さん。
もう完全に“恋してる人の思考回路”になってるよ』

「ああ」と心の中で呻いた。

 テルナの答えに心臓がズキズキと疼いた。

 ずっと見ないふりをしてきたものに、そっと指を差されたような気がした。

 ——『どうでもいい相手だったら、自分のこと、どう思ってるんだろう、なんて、こんなに何度も考えない。彼が見せる何気ない一言や視線や、ちょっとした沈黙さえ気になって仕方なくなるんだよ』
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