AI生成でママにされた私は、シングルの年下クズ男子に再構築されています。
 横へ、奥へ、進むだけのクレーンをどう動かせば景品を獲得できるか、天喜は考え、無駄なく手中におさめていた。日葵の期待に満ちた目に動揺することもなく、彼は淡々とボタンを押していた。

 その真剣な目つきに、宝瑠はひそかに胸を高鳴らせた。さっきまで見ていた天喜の表情を思い出し、また少し頬が熱くなった。

 好きと自覚してから、たびたび天喜をかっこいいと思ってしまう。そんな自分がたまらなく嫌だった。どうせ無理なのに、報われるわけないのに。ネガティブな想いに支配され、胸の奥がギュッと痛くなる。

 家族らしく接する彼を見ては、ドキドキと心拍数が上がり、ちょっとしたことで期待してしまう。

 天喜に名前を呼ばれたり、笑顔を向けられたり。家の中ですれ違う瞬間や車の中での助手席で、彼特有の香りが鼻腔をくすぐり、平静を装うのに苦労する。

 彼の存在を濃厚に感じて、自分が自分じゃないような錯覚に陥る。

 これらが俗に言う“恋煩い”なのは、わかりきっていた。

 天喜を好きだと思う瞬間、決まって過去のあのセリフを思い出してしまう。

 ——「彼女なんて要らないし必要ない」

 ハァ、と重いため息がひとつ落ちて、空気に溶けていく。宝瑠は俯けていた顔を上げ、天喜が消えて行った方向をジッと見つめた。人混みの中にちらっと影が揺れて、あ、と思う。

 今は商品待ちだ。
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