妹に婚約者を奪われましたが、皇太子殿下に一途に愛されています
「何かあったの?」

問いかけると、彼は笑って首を横に振った。

けれど、その笑顔はどこかぎこちない。

「いや……ただ、今日、カリーナは?」

唐突な質問に、私は少しだけ眉をひそめる。

「部屋にいると思うけれど。」

カリーナ――私の妹。明るくて、誰とでもすぐ打ち解けるあの子の名前を、なぜ今?

「そっか。ならいいんだ。」

そう言って、レイモンドはふっと安心したように笑った。

――どうして“いいんだ”なんて言うの?

小さな違和感が胸に残ったまま、彼を玄関先で見送った。

そしてその違和感は、帰り道の角を曲がった先で、形を成すことになる。

私は見てしまったのだ。

レイモンドが、裏庭の小径で誰かと親しげに話している姿を。

その相手のくるりと揺れた金の髪――カリーナだった。

どうして、カリーナがレイモンドと――?

廊下の突き当たり、応接間の窓辺に身を潜め、私はそっとカーテンの隙間から二人を見ていた。
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