妹に婚約者を奪われましたが、皇太子殿下に一途に愛されています
いや、同じ屋敷に暮らすのだから、顔を合わせることなど珍しくもないはず。

でも、何かが違った。

あの時のレイモンドの表情――優しく笑いかけるあの顔は、私に向けていたものと同じだった。

胸の奥に、ぞわりと冷たいものが走る。

試すように、私はわざと窓を軽く叩いた。コン、と小さな音。

レイモンドがはっとしたようにこちらを見た。

目が合ったわけではないけれど、彼の肩がびくりと揺れたのが分かった。

まるで何か、見られてはいけないものを見られたかのように。

そのまま彼は、そそくさとカリーナのもとを離れていく。

けれどカリーナは違った。

まるで余裕のある淑女のように、微笑を浮かべながら、去っていくレイモンドを見送っていた。

その横顔に、私は初めて“妹”としてではない、別の顔を見た気がした。
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