15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
きっとあれは、保身というよりも責任と配慮だったんだろう。

それでも。

少しだけ、胸の奥がちくりと痛んだ。

ふと名刺に視線を落としたとき、名前の上に小さく印字された肩書に気づいた。

――取締役副社長。

息を呑んだ。

この人、ただの社員どころか、会社の中枢にいる人なんだ。

CMで聞いたことのある企業。そのトップに立つ人が、今、私の目の前にいる。

「昨日のお話なんですが……」

私は、ほんの少し迷いながら口を開いた。

「……ああ」

彼もすぐに表情を引き締め、こちらを見つめ返す。

「特に私からは、何も要求しません」

その言葉に、一ノ瀬さんは静かに、そして深く頭を下げた。

「……恩に着る」

短いその言葉に、重さと誠実さが詰まっていた。

「それに、入院費だって……」

言いかけた私に、彼はそっと手を伸ばしてきた。

優しく、でもしっかりと、私の手を包み込む。
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