15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
交差点に進もうとしているのは、さっきの男性だった。

グレーのスーツの背中が、私の目の前にある。

「危ないっ!」

声が出たその瞬間、世界がスローモーションになった。

音が遠くなり、動きがゆっくりになる。

彼はまだ気づいていない。

そのままでは、車に――

私は傘を放り出し、体ごとその人を押した。

思い切り、強く。

彼の身体がぐらりと揺れ、足元が滑るように後ろへ下がった。

直後、私の視界が白く弾けた。

冷たい水と、硬い地面の感触。

どこかで誰かが叫んでいた。

でも、その声も、もうよく聞こえなかった。

「君、大丈夫か!」

その声は誰のものだろう。

頭が重い。痛い。

私……車に、ぶつかったのだろうか。

「うわっ! 大丈夫ですか!」

「大丈夫なわけないだろ、救急車を呼べ!」

「はいっ!」

誰かが慌ただしく駆けていく気配がした。
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