15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
「あなた、一人?」

救急隊の人が問いかけてきた。

けれど返事ができなかった。口は動くのに、声にならなかった。

「意識、朦朧!」

誰かが叫ぶ。

そのときだった――

私の手が、温かいもので包まれた。

ぎゅっと、しっかりと。

「俺が、一緒に乗ります」

低くて、でも強い声。

聞き覚えのあるその声に、心が微かに反応した。

「あなたは?」

「彼女に、助けてもらった者です」

ああ……あの人だ。

あのグレーのスーツの、紺色の傘の――あの人。

視界はにじんでいて、表情ははっきり見えないのに、

その手のぬくもりだけで、誰なのか分かった。

私は、かすかに指を動かした。

でも、ちゃんと握り返せたかどうかは分からない。

ただ、意識が薄れていく中で思った。

“……この手、あたたかいな”と。
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