15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
その先にいるのは――

私の気持ちに気づかないまま、「もう会わないほうがいい」と言った人。

だけど、それでも。

もう一度、会いたかった。

だから今日だけは、偶然に見せかけて、奇跡を信じてみたい。

歩道の流れに紛れて、私たちはオフィスビルの前に差しかかった。

何気なく会話をしているフリをしながら、私は視線だけを彷徨わせる。

だけど、姿は見えなかった。

「まだ来てないのかな……」

その時だった。

背後から、低く唸るエンジン音が近づいてきた。

――車?

ふと、何かに導かれるように後ろを振り返った。

ビル街の空気が、ふっと静まり返る。

そこに、黒の高級車。

見覚えのあるフォルムと、つややかなボディ。

スローモーションのように、車が私の横を通りすぎていく。

そして、わずかに開いた窓の奥――

あの瞳。
まっすぐ、こちらを見ていた。

「えっ……」

ほんの一瞬だった。
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