15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
「すみません。ずっと……いてくれたんですか?」

そう尋ねると、彼はゆっくりとうなずいた。

「うん。ずっと、君の手を離せなかったから」

その目には、深い感謝の念がこもっていた。

真っ直ぐに私を見つめる視線が、まるで言葉よりも雄弁だった。

「ええっと、私は……」

自分の状況を確認しようとしたその瞬間、彼が静かに口を開いた。

「交差点で車に轢かれそうになった俺を、君が助けてくれたんだ」

ああ、そうだ。

一瞬だけ記憶が逆戻りして、あの雨の交差点がよみがえった。

グレーのスーツ、紺の傘、そして赤信号を無視して突っ込んできた車。

「俺はかすり傷で済んだけど……君が頭を強く打ってね」

確かに、ずきずきと鈍く痛む。これがその証拠なんだろう。

「どう? 自分の名前、思い出せる?」

その問いに、少しだけ笑ってしまった。

記憶喪失なんてドラマの中の話だと思っていたけれど、聞かれると不思議な感じがする。
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