15歳差の御曹司に甘やかされています〜助けたはずがなぜか溺愛対象に〜
「以前、お世話になったことがあって……」

そう言おうとしたけれど、声にならなかった。

たった一杯のオレンジジュース。

たった一度のプレゼント。

たった一度の抱擁――

それだけで「また会いたい」なんて、我儘すぎる気がして。

言えない。言えないよ……。

沈黙が重くなる。

受付の女性が、申し訳なさそうに言った。

「ご予定が立て込んでおりますので、本日は難しいかと……」

「あのっ!」

さくらが、私の代わりに声を上げた。

「どうか、一言だけでも伝えていただけませんか? “大学生のひよりが来た”って。」

受付の女性は少し驚いた顔をして、それから視線を私に戻す。

私は、思い切って頭を下げた。

「ご迷惑なのは承知しています。でも……」

ほんの少しだけでもいい。

私の気持ちが、玲央さんに届いてほしい――

「……お願いします。」
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