私のテディベアに、私が溺愛されるまで
一朗は、留め終えたボタンにそっと指を置いたまま、楓の顔を覗き込んだ。

「……おまえさ」

声が低くて、真剣な響きだった。

「最近、なんか無防備すぎる」

「え……」

楓はとっさに目を逸らしたけれど、一朗の手が肩にかかり、逃げられなくなる。
近すぎる距離に、心臓が早鐘みたいに鳴った。

「おまえ、可愛いんだから……気を付けろ」

その言葉に、楓は目を見開いた。

(……可愛いって、今、言った?)

一朗の指先が、まだそっとブラウスの襟元に触れている。
その微かな熱が、楓の肌に残っていた。

「どこで誰に見られるかわかんねぇんだから。みんな俺みたいに紳士じゃねえぞ」

一朗はふっと息を吐きながらそう続けた。
楓の胸がきゅうっと締めつけられる。

一朗はじっと楓を見つめたまま、手を離した。
けれど、その瞳の奥に、どこか言い足りないものが潜んでいるように見えた。
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