私のテディベアに、私が溺愛されるまで
6
夏の夕方。
大学のキャンパスは、授業を終えた学生たちでまだ賑わっていた。
一朗は講義資料の入ったカバンを肩に掛け、校舎を出たところで足を止めた。
人の流れの向こう側で、自分を見ている視線に気づいたからだ。
スーツ姿の若い男が、まるで待ち伏せしていたようにこちらへ歩み寄ってくる。
「……桜井一朗先生、ですよね?」
一朗は訝しげに目を細めた。
「俺に何か用ですか?」
男は深々と頭を下げた。
「初めまして。中瀬といいます」
「……中瀬?」
「瑠璃さんと……お付き合いしています」
一朗は一瞬、息を呑んだ。
「……瑠璃って、湯田中瑠璃のことですか?」
「はい」
中瀬と名乗った男は、真剣な表情で言葉を続けた。
「急にすみません。瑠璃さんの話に、よく桜井先生のお名前が出てくるんです。どうしても一度、ちゃんとご挨拶したくて」
一朗の胸に、ざらりとした感情が広がった。
初夏の風が吹き抜ける中、二人の間だけが妙に張りつめた空気になった。
大学のキャンパスは、授業を終えた学生たちでまだ賑わっていた。
一朗は講義資料の入ったカバンを肩に掛け、校舎を出たところで足を止めた。
人の流れの向こう側で、自分を見ている視線に気づいたからだ。
スーツ姿の若い男が、まるで待ち伏せしていたようにこちらへ歩み寄ってくる。
「……桜井一朗先生、ですよね?」
一朗は訝しげに目を細めた。
「俺に何か用ですか?」
男は深々と頭を下げた。
「初めまして。中瀬といいます」
「……中瀬?」
「瑠璃さんと……お付き合いしています」
一朗は一瞬、息を呑んだ。
「……瑠璃って、湯田中瑠璃のことですか?」
「はい」
中瀬と名乗った男は、真剣な表情で言葉を続けた。
「急にすみません。瑠璃さんの話に、よく桜井先生のお名前が出てくるんです。どうしても一度、ちゃんとご挨拶したくて」
一朗の胸に、ざらりとした感情が広がった。
初夏の風が吹き抜ける中、二人の間だけが妙に張りつめた空気になった。