私のテディベアに、私が溺愛されるまで

7

カフェの静かな空気から離れ、一朗はゆっくりと立ち上がった。
胸の奥に沈む複雑な感情を整理するように、深く息をつく。

そのとき、スマホが震えた。
画面には見慣れた名前が浮かんでいる。

「楓……?」

帰宅すると、玄関のチャイムが鳴った。

「……はーい、今開ける!」

声の主は、隣の家の楓だった。
いつもの元気な調子で、だけど少し寂しげに。

「ご飯作ってー」

一朗は微かに笑い、ドアを開けた。

「遅くなって悪い。腹減ったか?」

「うん、今日は誰もいなくて寂しかったんだもん」

楓がぽつりと言う。

「まあ、俺も似たようなもんだ」

一朗はテーブルにカバンを置きながら答えた。

いつも通りの、変わらない日常。

そんなささいな時間が、どこか安心できる居場所だった。
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