私のテディベアに、私が溺愛されるまで
「……今日は飲みたい気分なんだ」

一朗がぽつりと言った。

楓が首を傾げる。
「珍しいね。どうしたの?」

「ちょっとな」

それ以上は語らず、一朗は棚の奥から一本のボトルを取り出した。
深い琥珀色をした、とっておきのウイスキー。

「せっかくだし、開けるか」

一朗はキャップを外し、香りを確かめるように鼻を近づけた。
樽香とスモーキーな香りがふわりと広がる。

「うわ……いい匂い」
楓が目を輝かせる。

「おまえは飲むなよ」

「わかってるって」

一朗は冷蔵庫を開け、さっと中を確認した。
「……ウイスキーに合いそうなの、適当に作か」

キッチンで手際よく動き始める。

・スモークサーモンとクリームチーズのカナッペ
・軽く炙った鶏むね肉のたたき、柚子胡椒添え
・オリーブとチーズの盛り合わせ
・セロリとナッツのサラダ

「適当って言う割に、全部洒落てるよね」
楓が笑いながら呟く。

「好きなんだよ、こういうの」

トントントンと包丁の音が、夜の部屋に心地よく響いた。
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