私のテディベアに、私が溺愛されるまで
しばらく二人で箸を動かしていたが、楓はふと顔を上げた。
そして、一朗をじっと見つめたまま、小さな声で口を開く。

「……ねぇ、一朗。お姉ちゃんのこと、知ってる?」

一朗の箸が、また止まった。
その瞬間、彼の目が鋭くなる。

「なに? 瑠璃がどうかしたのか」

低い声。
普段はもっさりしているくせに、こういう時だけ妙に敏感になる。

楓は少し視線を泳がせた。
「あ、いや……その……別にたいしたことじゃないんだけど……」

「楓」

一朗がぐっと身を乗り出した。
楓はびくりと肩を揺らす。

「またストーカーにでもつきまとわれてるのか?」

その目つきは、柔らかなテディベアとはまるで別人のように鋭い。
昔、楓が塾帰りに変質者に声をかけられた時も、同じ目をしていた。

「違うよ……。そういうんじゃないけど……」

「はっきり言え」

一朗の声が低く響く。
楓は唇をぎゅっと噛みしめ、それから小さく息を吐いた。

「お姉ちゃんさ……最近、電話とか急に切ったり、なんか……変なんだよ」
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