私のテディベアに、私が溺愛されるまで
陸はグラスの縁を指先で撫でながら、小さく息をついた。

「……うるさい姉だけどさ」

一朗がちらりと陸を見る。

陸は真顔のまま、続けた。

「可哀想になってきた」

その目は、まるで冷たい刃のように鋭かった。
本当に一朗をうんざりした目で見ている。

「純文学の講師だろ?」

「……あぁ」

「なんで目の前の人間を考察できないんだよ。察せよ」

一朗は少し眉を寄せたまま、黙っていた。

陸はさらに言葉を重ねる。

「姉貴の気持ちなんて、見りゃ分かるだろ。なんで本ばっか読んでんだ」

一朗は苦い顔で、グラスの氷をカラカラと回した。

「……察することができないから、学んでるんだろ」

その言葉に、陸はふっと吹き出した。

「……一朗にい、珍しくいいこと言うじゃん」

陸は珍しくクスッと笑い、その表情には優しさが滲んでいた。
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